親子で初めて見直した毎月の支出
翌月、文子さんからいつもの連絡がありました。健一さんは意を決して伝えます。
「母さん、悪いけど、これからも毎月5万円をずっと送るのは難しいよ」
電話の向こうで、文子さんは黙りました。
「もう助けてもらえないってこと?」
「そうじゃない。でも、俺にも子どもが2人いるし、これから学費がかかる。だから一度、母さんが毎月いくら使ってるのか、一緒に確認しよう」
後日、2人は通帳や家賃の明細、公共料金の請求書などを並べました。年金だけでは毎月の支出を賄いきれず、仕送りが家計を支えていたことは事実でした。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯では、月の実収入は平均13万1,456円、可処分所得は11万8,465円。それに対し、消費支出は14万8,445円でした。平均でも可処分所得を消費支出が上回っています。
一方、文子さんの場合、大きかったのは6万5,000円の家賃です。
「この家にずっと住みたい?」
健一さんが尋ねると、母は「別にここじゃなきゃいけないわけじゃない」と答えました。
そこで、すぐに仕送りをゼロにするのではなく、まず住居費を含めた生活全体を見直すことにしました。自治体の高齢者向け住宅施策や公営住宅についても調べ、利用できる制度がないか相談。健一さんも、転居が決まるまでの間は援助を続けることにします。
「今まで、5万円を振り込めばそれで済むと思っていたんです。母も、それが毎月入る前提で生活していた。どちらも6年間、先のことを考えていなかったんですよね」
なお、親子には民法上の扶養義務がありますが、子どもから親への扶養について、厚生労働省の生活保護実施要領では、扶養する側の世帯構成や収入などを踏まえ、「社会通念上それらの者にふさわしいと認められる程度の生活を損わない限度」で考えるとされています。
また、生活に困窮した場合、別居する親族に相談してからでなければ生活保護を申請できないわけではありません。厚生労働省も、扶養義務者による扶養は保護に優先するとしながら、親族への相談を申請の前提とはしていないと説明しています。
親への仕送りは、一度始めると「今月も」と続きやすいものです。しかし、親の家計も援助する子どもの家計も、何年も同じ状態が続くとは限りません。
毎月いくら渡せるかだけでなく、その援助をいつまで続けるのか、親自身の収入や住居費に見直せる部分はないのか。援助する側が無理を重ねる前に、双方の家計を確認し、継続できる方法を考えることも必要でしょう。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

