夫婦が変えた“予定を決める順番”
その夜、正志さんは由美子さんに言いました。
「これからは、自分たちの予定を先に入れない?」
孫を預かるのをやめようという話ではありません。
旅行へ行く日や友人と会う日は先に予定を入れ、その日に頼まれたら断る。逆に何もなければ、これまで通り引き受ける。それだけでした。
由美子さんは少し迷ったものの、娘にもそのまま伝えることにしました。
「これから私たちも出かける予定を入れるから、いつでも大丈夫とは言えないかもしれない」
娘の返事は意外にあっさりしたものでした。
「もちろんいいよ。無理な日は言って」
由美子さんは拍子抜けしたといいます。
「娘から『いつでも空けておいて』と言われたことなんて、一度もなかったんです。私が勝手に、頼まれたら応えなきゃと思っていた部分もあったんでしょうね」
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、子や孫の生活費を「ほとんど負担している」「一部を負担している」を合わせた割合は25.2%です。金銭面でも、一定数の高齢者が子や孫の生活を支えています。
翌月、夫婦は以前見送った1泊旅行を予約しました。さらに由美子さんは友人とのランチ、正志さんは趣味の集まりの日程を先にカレンダーへ書き込みます。
その後も孫は預かっています。
ただし、「孫の予定が入るかもしれないから空けておく」のではなく、「自分たちの予定がなければ引き受ける」に変わりました。
「この前も娘から頼まれたんですけど、その日は旅行だったので『ごめん、その日は無理』って初めて言いました。そしたら『分かった』で終わり。あんなに気にしていたのは何だったんだろうって」
正志さんも、「孫と過ごす日は今でも楽しい。でも、それだけで1ヵ月の予定を組まなくてもいいんだよな」と話します。
子や孫を支えることに、決まった頻度や形があるわけではありません。家庭の事情だけでなく、祖父母側の体力や生活、やりたいことも変化していきます。
頼まれたらできる限り応えるのか、曜日を決めるのか、自分の予定がない日に引き受けるのか。孫との時間を大切にしながら、自分たちの予定も同じようにカレンダーへ書き込む。どちらかを犠牲にするのではなく、双方が無理なく続けられる形を話し合うことが大切でしょう。
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