「家のローンはないのに」年金生活で気づいた毎月の負担
「ずっとここに住むつもりだったんです。ローンも終わっていましたから」
そう話す美代子さん(仮名・69歳)は、夫の隆さん(仮名・69歳)と都内の都営住宅で暮らしています。2人合わせた年金は月約20万円です。
以前住んでいたのは、30代で購入した郊外の4LDKの一戸建て。子ども2人を育て、住宅ローンは隆さんが65歳になる前に完済しました。
子どもたちはすでに独立しています。
最後の返済を終えたとき、隆さんは「これで毎月のローンを気にしなくていいな」と喜んだそうです。ところが退職後に夫婦で家計を整理してみると、住宅ローンとは別に、家を持ち続けるための支出がいくつも残っていました。
固定資産税に火災・地震保険。築30年を超えた家では、給湯器やエアコンなども順番に古くなっています。
さらに夫婦の生活に欠かせなかったのが車です。
最寄り駅まではバスを使う必要があり、スーパーや病院へ行くにも車が便利な地域。ガソリン代だけでなく、自動車税や任意保険、車検などもあります。
ある日、美代子さんが年間の支出をノートに書き出していると、隆さんが尋ねました。
「そんなに何を計算してるんだ?」
「家に住み続けるのに、結局いくらかかってるのかなと思って」
月々の住宅ローンはゼロです。それでも、家と車を維持するための支出を年間で見れば、決してゼロではありません。
「ローンさえ終われば、あとは年金で普通に暮らしていけると思っていたんです。でも、“家賃がない”からといって、“住むのにお金がかからない”わけではなかった」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、現在の住居について「家賃、税金、住宅維持費など住宅に関する経済的負担が重い」と答えた人は15.5%でした。また、「住まいが古くなり、いたんでいる」は29.5%に上ります。
それでも、美代子さん夫婦は当初、家を売るつもりはありませんでした。
「持ち家を売って団地に入ったなんて言ったら、『お金に困ったの?』と思われそうで。子どもにも最初は言いづらかったです」
年金だけで暮らせない状況だったわけではありません。
ただ、これから70代、80代になるなかで、古くなる家と車を維持し続けるためにお金を使うことが、自分たちにとって最善なのか。夫婦はそこから考えるようになりました。
