「まだ使えるから」買い替えも旅行も先送りしてきた71歳夫婦
「この冷蔵庫、そろそろ買い替えない?」
妻の洋子さん(仮名・71歳)がそう切り出すと、夫の正志さん(仮名・71歳)は、「まだ動いてるんだからいいだろう」と答えました。
冷蔵庫は購入から15年以上。音が大きくなり、洋子さんは以前から買い替えを考えていました。
夫婦はともに会社員として働き、正志さんは65歳、洋子さんは63歳で退職。現在は住宅ローンを完済したマンションで暮らしています。
2人合わせた年金は月約24万円。預貯金や退職金として残してきた金融資産は約5,000万円あります。
決してお金がないわけではありません。それでも、2人には現役時代から「使えるものは最後まで使う」という習慣がありました。
洋子さんが友人から温泉旅行に誘われても、「今回はいいかな」と断る。正志さんが以前から欲しがっていたカメラも、「今のが壊れてからでいい」と見送る。
1回数万円程度の支出でも、必要でなければ使わない。それを長年続けてきました。
退職後、その傾向はさらに強くなったといいます。
「働いていたころは翌月も給料が入ってきます。でも、退職すると貯金は一度使ったら減るだけだと思ってしまって」
そんな洋子さんの考えが揺らいだのは、同年代の友人と食事をしたときでした。友人は最近、夫婦で九州を旅行したといいます。
「元気に歩けるうちに行きたいところへ行っておこうと思って」
その言葉を聞き、洋子さんは自宅に戻ってから正志さんに尋ねました。
「私たち、何のためにこんなに残してるんだろうね」
正志さんは「病気になったときとか、介護が必要になったときだろう」と答えます。
「じゃあ、そのためにいくら残したいの?」
そう聞かれると、具体的な金額は答えられませんでした。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、金融資産の総額は平均1,769万円、中央値1,000万円。一方、今後の生活に必要だと思う金融資産は平均2,648万円、中央値2,000万円でした。将来への備えとして、実際に持っている資産以上の金額が必要だと考える人がいることがうかがえます。
洋子さん夫婦も「老後にはお金がかかる」と考えてきました。しかし、具体的にいくら必要なのかを計算したことはなかったのです。
