「減らさないこと」が目的に…夫婦で初めて決めたお金の使い道
それから夫婦は、毎月いくら使っているのか、通帳やクレジットカードの明細を見ながら確認してみました。
年金は2人で月約24万円。月によって多少の赤字は出るものの、日常の生活費はおおむね年金の範囲に収まっています。まとまった支出として考えられるのは、家電の買い替えやマンションの修繕、今後増える可能性がある医療・介護費などでした。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月の可処分所得が平均22万1,544円、消費支出は26万3,979円です。平均では毎月の消費支出が可処分所得を上回っており、退職後に貯蓄を取り崩すこと自体は珍しいことではありません。
正志さん夫婦が改めて考えたのは、「5,000万円を減らさないこと」ではなく、「これから何に、どのくらいのお金が必要なのか」でした。
「今まで逆だったのかもしれないな」
家計を確認しながら、正志さんがそう口にしました。
「必要なお金を残そうとしてたんじゃなくて、とにかく5,000万円を減らしたくなかっただけなんだよな」
そこで2人は、日々の生活費とは別に、家電の買い替えや住まいにかかる費用、将来の医療・介護などに備えるお金を確保。そのうえで、旅行や趣味にも毎年一定額を使うことにしました。
最初に買い替えたのは、例の冷蔵庫です。
さらに洋子さんは、以前断った友人との旅行に参加。正志さんもカメラを新調しました。
「急にぜいたくを始めたわけじゃないんです。今でも値段は見ます。でも、『まだ買えるか』ではなくて、『自分たちが使いたいか』も考えるようになりました」
内閣府の同調査では、今後優先的にお金を使いたいものとして「趣味やレジャー(旅行等)の費用」を挙げた人は32.4%でした。また、将来的な財産の使い道については「遺族等へ財産を残したい」が35.9%である一方、「財産は自分のために使いたい」も33.0%となっています。
老後資金には、誰にでも当てはまる「ここまで貯めれば、あとは使っていい」という金額があるわけではありません。住居や健康状態、家族構成によって必要な備えは異なります。
一方、将来が不安だからという理由だけで支出を先送りし続ければ、資産が残っていても、使いたかった時期を逃す可能性があります。いくら持っているかだけでなく、何に備えていくら残し、今の生活にはどの程度使うのか。貯めたお金の役割を具体的に考えることも、退職後の家計管理の一つといえるでしょう。
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