「直して住むか、売れるうちに売るか」67歳夫婦が選んだ答え
ある日、洋子さんは隆さんに聞きました。
「この家にあと何百万円かけるなら、そのお金で住み替えることも考えてみない?」
隆さんは最初、「せっかくローンを払い終えたのに」と戸惑ったそうです。それでも夫婦で不動産会社に相談すると、自宅にはまだ一定の売却価値があることが分かりました。
そこで初めて、「住み続ける」以外の選択肢を具体的に検討します。
夫婦が探したのは豪華なマンションではありません。駅から徒歩圏内で、スーパーとクリニックが近く、エレベーターがある中古マンション。広さも、4LDKから夫婦2人で暮らせる2LDKへと絞りました。
内閣府の同調査では、高齢者が住まいや地域の環境で重視することとして、医療・介護サービスへのアクセスや、駅・買い物場所への近さなどが上位に挙げられています。また、高齢者の76.2%が持ち家の一戸建てに暮らしており、高齢期の住まいとして一戸建ては依然として一般的です。
だからこそ、洋子さん夫婦にとっても、ローンを完済した家を手放す決断は簡単ではありませんでした。
「子どもたちにも一応聞きました。『この家、将来住みたい?』って。そしたら2人とも、『自分たちは今の場所で暮らすと思う』って」
その言葉も、夫婦の背中を押しました。
最終的に自宅を売却し、その資金を住み替え費用の一部に充てました。現在は以前よりコンパクトな2LDKで暮らしています。
もちろんマンションなら住居費がかからないわけではありません。管理費や修繕積立金、固定資産税が必要で、室内設備の修理や交換は自分たちで負担します。
最近、隆さんは「ここなら80歳を過ぎても普通に暮らせそうだな」と話すようになりました。
住宅ローンを完済した持ち家は、大切な資産です。一方で、建物は年月とともに老朽化し、維持には費用も手間もかかります。
洋子さん夫婦が考えたのは、持ち家を手放すことそのものではなく、年金中心の生活になったあと、今の家にどこまでお金をかけて住み続けるのかという問題でした。
「ローンを払い終えたら、この家に一生住む」。長くそう考えていた夫婦は67歳で、その前提を初めて見直すことになったのです。
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