節税を「メイン」としたマンション経営は間違い
昨今、投資用マンションの営業をする際に、所得税や住民税の節税効果をアピールするのは当たり前となりました。たしかに多くの場合、マンション経営の損益通算によって節税になるケースはありますが、これをメインとしてしまうと間違ったマンション経営をしてしまう可能性があります。その問題とは次のうちどれでしょうか?
1.賃料に対して割高な物件を購入する可能性がある
2.通常より高い金利での借り入れになる可能性がある
3.税務署のチェックが入り、ペナルティの対象になる可能性がある
A.全部です。
<解説>
一問一答でなくてすいません。本連載でマンション経営をおすすめする目的は、より早く、より多くの家賃収入を得て給与以外の収入源を確保することです。しかし、これら3つは全てそれに反した結果になります。
サラリーマンがマンション経営によって所得税や住民税を節税する場合、マンション経営の申告上の事業収支が赤字になればなるほど、その節税効果が高まります。赤字になるには様々な要因がありますが、一つに物件価格そのものが割高で、ローンの返済額が家賃を大きく上回ってしまうことがあります。
販売会社の中には、高額所得者をターゲットとして、節税のためにあえて相場より割高な物件をすすめるところがあります。しかし、これは本末転倒ではないでしょうか。割高な分、賃料収入を建物の減価償却が上回り、赤字部分が節税になるのです。また、万が一売却するような事態になった場合、多くがその中古価格の相場で手放すことになるので、割高で買ってしまうと、損をする額が多くなります。それによって、全体の赤字の何割かが節税できたとしても、そんなものはまったく意味がありません。節税のためにあえて割高な物件を購入する意味はないのではないでしょうか。
ほかにも販売会社が節税効果を高く見せるために行う方法があります。たとえば金利の高い金融機関から融資をさせるのです。現在(2015年6月)の投資物件向けローンの金利は2%前後です。ところが先日お会いしたあるお客様から話を聞いたところ、その方は4%近い金利で物件を購入したというのです。理由を聞くと「節税のシミュレーションをしてもらったら、この金利がいいといわれた」とのこと。
たしかに金利を上げれば毎月の返済額も増えるので、キャッシュフローがマイナスになりやすく節税効果が上がります。しかし、それがお得とはいえません。たとえば2,000万円を金利4%の元利均等35年払いで借りた場合、総返済額は3,720万円です。それが金利2%になれば総返済額は2,783万円。937万円の差はけっして節税では埋まらないはずです。
また、今のサラリーマンとしての収入を、この先も維持できるとは限りません。もし、給与が下がってしまったら、たちまち節税どころではなくなり、毎月のローンの返済もできなくなってしまうのです。
金利に対しても相場をしっかり把握せず、収支が合わないのに、無理に金利が高い金融機関から借りる必要はないのではないでしょうか。
常識を逸脱する経費計上は罰則の対象に
さらに、よく聞く節税の方法に、その他の経費の計上があります。マンション経営における経費には減価償却費、ローンの利息(建物分)、管理費、修繕費、固定資産税、保険、雑費などがあります。
節税効果を狙うがゆえに、特に雑費においては白色申告の場合、領収書の添付義務がないことを利用し、運営上の必要経費とはまったく関係のない飲食費やゴルフの費用等まで計上してしまうケースがあります。事実、あるお客様は、こうした手法を用い、2戸のマンション経営による確定申告で約500万円赤字にした、とおっしゃっていました。つまり1戸の物件で年間250万円の赤字です。
私はびっくり仰天し、「本当に? マジで? ウソですよね!?」と3度聞き返してしまいました。いくらなんでもそれはやり過ぎです。あまりにも豪快なので詳しくやり方を聞いてみると、本人が暴走してあれもこれもと経費計上しているようでした。もし、販売会社の営業担当がそのようなアドバイスをしていたら税理士法違反、つまり違法行為です。そのような営業担当とは付き合わない方が賢明でしょう。
また、あまりに常識を逸した経費を計上していると、さすがに税務署に目をつけられてしまいます。脱税や申告漏れには当然罰則があります。節税になるケースもありますが、このような違法な節税をメインとしたマンション経営はおすすめできません。修正申告は7年間遡られるので、その間ずっとドキドキしなければなりません。
繰り返しますが、本連載のおすすめするマンション経営の目的は、少しでも多くの家賃収入を得ていずれは給与以外の収入源を確保すること。つまりサラリーマンとしての労働収入をいつか権利的な収入に転換させることです。所得税や住民税の節税はあくまでもオプションとしておきましょう。