「今年から少し変えたい」息子に伝えた帰省のルール
翌年の夏が近づくと、直樹さんから連絡がありました。
「今年は12日から16日まで行こうかな」
4泊5日です。以前なら、そのまま了承していたでしょう。しかし舞子さんは夫と相談したうえで、息子に電話をしました。
「来るのはいいんだけど、今年から少し変えたいことがあるの」
「何?」
「全部こっちで用意するのは、もうしんどいの。朝ごはんは各自でやってほしいし、夕飯も毎日作るのはやめたい」
直樹さんはしばらく黙った後、「そんなに大変だった?」と聞きました。
舞子さんはそこで初めて、布団の準備から買い出し、6人分の料理、洗濯、帰省後の片づけまで、自分たちがしてきたことを具体的に話しました。
「あなたたちは実家だから休めるでしょう。でも、あなたたちが休んでいる間、こっちは普段より忙しいのよ」
直樹さんは「ごめん。そこまで考えてなかった」と答えました。
息子にとって実家は、子どものころから「帰ればご飯が出てくる場所」でした。その感覚が、自分が家庭を持ってからも残っていたのです。
厚生労働省『2024(令和6)年国民生活基礎調査』によると、65歳以上の人がいる世帯のうち、三世代世帯は6.3%。1986年には44.8%でした。一方、2024年には「夫婦のみの世帯」が31.8%、「単独世帯」が32.7%となっています。高齢の親世代と子ども世代が別々の世帯で暮らすケースが多いなか、帰省は普段とは異なる人数で生活する期間でもあります。
その年から、直樹さん一家の帰省の仕方は変わりました。
初日の夕食は外食。翌日は直樹さん夫婦が買い出しと夕食を担当し、朝食はパンやヨーグルトなどを各自で用意します。洗濯も必要なら自分たちで回すことにしました。
滞在は4泊から3泊へ短縮しました。
「不思議なんですけど、前より帰ってくるのが楽しみになりました」
舞子さんはそう話します。
迎える側が何も言わずに準備を続けていれば、訪れる側はその負担に気づかないこともあります。
また、親が年齢を重ねれば、これまで当たり前にできていたことが負担になる場合もあります。帰省の習慣そのものをやめなくても、食事や洗濯を誰が担うのか、何泊なら無理なく迎えられるのか。その都度、家族に合った形へ変えていくことも必要でしょう。
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