突然「遺言執行者」のお鉢が回ってきたのだが…
【相談内容】
独身の叔母Aが亡くなりました。叔母Aは生前に公正証書遺言を作成しており、遺言執行者として、すぐ下の妹にあたる、もうひとりの叔母Bが指定されていました。
ところが、叔母Aより先に叔母Bが亡くなっていたことから、予備的に指定されていた最年長の甥である私が遺言執行者となってしまいました。
叔母Aは子どももいないうえ、私の父親を含む、叔母B以外の兄弟姉妹の全員が亡くなっています。そのため、相続人は複数名の甥姪(私から見ていとこ)となっています。
突然の話であり、遺言執行者として何をすればいいのかさっぱりわかりません。また、いとこたちとは疎遠で、連絡先が分からない人が大半です。何より問題は、私は仕事が忙しく、対応する時間が十分に取れないのです。いったいどうしたらいいのか、途方に暮れています。
(横浜市・50代会社員)
遺言書があれば、理論上はスムーズに手続きできるはずだが…
一般的に、遺言書がない場合の相続は、相続人全員の合意のもとで遺産分割協議を行う必要があります。一方、遺言書がある場合には、その内容に従って手続きを進めることができるため、理論上はスムーズに進むはずです。
しかし、実務上は遺言執行者が単独で手続きを進められる代わりに、その責任が集中する構造になっています。
遺言執行者に求められる主な業務
遺言執行者には、法律上さまざまな義務が課されています。主なものは以下のとおりです。
●相続人全員への就任通知および遺言内容の通知
●戸籍の収集および相続関係の確定
●相続財産の調査および財産目録の作成
●預貯金・有価証券等の解約、払戻し手続き
●不動産の名義変更(相続登記)
●遺言内容に基づく分配の実施
原則として、これらを遺言執行者ひとりで担うことになります。
また、財産目録の開示や手続き状況の報告といった義務もあるため、対応を誤ると相続人間のトラブルに発展するリスクもあります。
相続人が多いことによる手続きの難しさ
今回の相談例のように、相続人が甥姪世代に広がっている場合、次のような問題が生じやすくなります。
●人数が多く連絡調整が困難
●住所や連絡先が分からない相続人がいる
●関係性が希薄で不信感が生まれやすい
●手続きの説明や理解に時間がかかる
遺言がある場合でも、こうした調整は避けて通れません。本件については当事務所が遺言執行者の代理人となり、下記の一連の手続きをサポートしました。
●相続人全員への通知文書の作成・発送
●戸籍収集および相続関係説明図の作成
●金融機関への連絡および預貯金の解約手続き
●相続財産目録の作成と各相続人への開示
●不動産の相続登記
調査の結果、相続税の申告が必要であることが判明したため、提携先の税理士と連携し、申告および納税まで対応しました。
遺言執行者は「名義人」ではなく「責任者」
誤解されがちですが、遺言執行者は単なる手続きの窓口ではありません。
遺言執行者とは、財産管理を一時的に担う立場です。また、相続人全体に対して公平に対応する義務があり、手続きの適正性について責任を負う立場でもあります。
そのため、知識や経験がないまま対応すると、思わぬトラブルや負担を抱えることになりかねません。
遺言書がある場合でも、相続手続きが簡単になるとは限りません。本件のように、「遺言執行者に指定された」「相続人がたくさんいる」「親族関係が希薄」といった場合には、専門家への相談が必要になってくるといえます。
相続が発生したことで遺言執行者となったものの、手続きをどのように進めればよいか分からない場合は、早めに状況を整理することが重要です。
*本件は個人情報保護のため、内容は一部改変を加えています。
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
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