一軒家から2DKの団地へ…「狭くなったのに安心した」理由
問題は、長年暮らした家を本当に売れるかでした。
「子どもたちが帰ってくる家をなくしていいのかな」
美代子さんが迷うと、長男から意外な言葉が返ってきました。
「俺たちのために残しておかなくていいよ。2人が暮らしやすいほうがいいじゃん」
夫婦は最終的に一戸建てを約2,000万円で売却しました。仲介手数料などの諸費用を差し引いても、まとまった資金が手元に残りました。
引っ越しを機に家具や荷物も大幅に整理。4LDKから2DKになったため、当然、以前と同じようには物を置けません。
それでも美代子さんは、「狭くなった」というより「管理するものが減った」と感じたといいます。
そして何より変わったのがお金への感覚でした。
一戸建てにいたころは、毎月の住居費が少ない一方、「次はどこが壊れるだろう」と考えていました。
団地では家賃が毎月発生します。しかし、夫婦にとってはそのほうが住居費の見通しを立てやすくなりました。
「家賃を払うなんてもったいないと思っていたんです。でも、私たちの場合は、何十万円、何百万円という修繕が突然必要になるかもしれないほうが怖かったんですよね」
もちろん、持ち家を売って賃貸住宅に移れば必ず家計が改善するわけではありません。売却価格や家賃、修繕状況、今後の居住期間などによって結果は大きく異なります。また、公営住宅には収入基準や募集戸数などの条件があります。
それでも美代子さん夫婦の場合、売却前に約1,200万円だった預貯金に自宅の売却代金が加わり、「家」という資産の一部を、生活や将来のために使える資金へ変えられたことが大きかったといいます。
「前は家を持っていない老後のほうが不安だと思っていました。でも今は、家を維持し続けることへの不安がなくなりました」
老後の住まいに唯一の正解はありません。持ち家を維持する選択にも、売却して住み替える選択にも、それぞれ費用とメリットがあります。
大切なのは「ローンを完済したから住居費はかからない」と考えるのではなく、修繕や税負担、家の管理、交通の利便性まで含めて、この先の暮らしに必要な住まいを考えることなのでしょう。
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