「お祝いだけ送っておくね」母が初めて決めた線引き
数日後、彩香さんから電話がありました。
「お母さん、誕生日会どうする? 予約したいんだけど」
由美子さんは少し迷ってから答えました。
「今回は行かないで、お祝いだけ送っておくね」
「え、なんで?」
彩香さんは明らかに驚いていました。由美子さんは「予定があるから」とごまかしかけましたが、正直に話すことにしました。
「この1年、ベビーカーとかお節句とか、いろいろ出してきたでしょう。もちろん私たちもしたくてやったんだけど、最近ちょっと多かったかなと思ってるの」
彩香さんは黙りました。
「誕生日を祝いたくないわけじゃないよ。でも、何かあるたびに私たちがお金を出すのが当たり前になるのは違うと思って」
すると彩香さんは言いました。
「そんなふうに思ってたなら言ってよ。私は、お母さんたちもやりたいんだと思ってた」
由美子さんは、その言葉にも驚きました。
自分では「娘に頼まれて出している」と感じる場面が増えていました。一方の彩香さんは、母が喜んで申し出ていると思っていたのです。
振り返れば、由美子さん自身も「初孫だから」と先回りして財布を開いていました。
由美子さん夫婦はすぐに生活に困る状況ではありません。しかし、年金生活になった以上、現役時代と同じ感覚で臨時支出を続けることには不安がありました。
結局、誕生日会には参加しないという当初の判断を変え、夫婦で出席することにしました。
ただし、ホテルでの食事代は彩香さん夫婦とそれぞれ負担。誕生日プレゼントも、夫婦で決めた予算内のものを贈りました。
「断りたかったのは誕生日会じゃなくて、『祖父母が出すもの』みたいになっていた流れだったんですよね」
その後は、クリスマスや誕生日の贈り物についても、おおよその予算を決めるようになりました。
孫への支出は、祖父母自身が望んでいる場合には楽しみの一つになります。しかし、一度始めた援助が毎年の慣例になれば、どちらから言い出したことなのか分からなくなることもあります。
祝い事のたびに金額を決めるのではなく、どの程度までなら無理なく続けられるのか。子ども世帯との関係を長く保つためにも、祖父母側が自分たちの家計を優先して線を引くことは、決して不自然なことではないでしょう。
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