畑は好きだが家を手放す…72歳夫婦が選んだ駅前マンション
決定打となったのは、真理子さんの通院でした。膝の痛みが続き、整形外科へ定期的に通うことになったのです。
車なら片道20分ほど。しかし真理子さんは運転をやめており、毎回康夫さんが送迎しました。
「夫が元気だから今はいいんです。でも夫が運転できなくなったら、ここでどう暮らすんだろうと初めて考えました」
最寄りのバス停までは徒歩10分ほどですが、本数は多くありません。スーパーへ行くにも車が前提でした。
夫婦は試しに「車を使わない一日」を考えてみました。
買い物はどうするのか。病院にはどう行くのか。80代になっても庭や家の周囲を管理できるのか。
「畑を続けたいかと聞かれたら、続けたいんです。でも、畑を続けるために生活全部が不便になるのは違うのかなと思いました」
夫婦は市内中心部の物件を見始めました。
選んだのは駅から徒歩圏内にある中古マンションです。スーパーと内科は歩いて行け、路線バスも利用できます。
現在の戸建ては、マンションへの入居時期を見ながら売却する予定です。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、65歳以上の8割以上が持家に暮らしています。一方、高齢期の住み替えでは、健康や体力だけでなく、移動や買い物といった生活上の利便性も重要な検討材料となっています。
真理子さんは、庭を手放すことに寂しさがないわけではありません。
「ここへ来なければ、畑仕事をこんなに楽しむこともなかったと思います。だから失敗だったとは思っていません」
マンションへ移った後は、市民農園を借りることも考えているそうです。
高齢期の住み替えでは、「いま暮らしたい家」と「この先も暮らし続けられる家」が一致するとは限りません。庭や畑を楽しめる広さも、年齢や体力が変われば管理の負担になることがあります。
車を使えなくなった場合の買い物や通院、住宅や庭の維持を誰が担うのか。70代以降の住まいを考えるときには、現在の暮らしだけでなく、数年先の生活まで具体的に想像することが重要でしょう。
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