(※写真はイメージです/PIXTA)

退職金や年金の見込みが立ち、住宅ローンの返済も終われば、夫婦で過ごす老後を具体的に思い描く人もいるでしょう。しかし、長く連れ添った夫婦であっても、その生活が続くとは限りません。離婚となれば、夫婦で使うつもりだった資産も、その後の暮らしを前提に考え直す必要があります。

退職金3,600万円で安心した矢先…66歳夫から告げられた言葉

「老後は夫婦で旅行するものだと思っていました。疑ったこともなかったんです」

 

美智子さん(仮名・63歳)は、66歳の夫・浩二さん(仮名)と結婚して36年になります。

 

浩二さんは大手企業に長く勤め、65歳で退職しました。退職金は約3,600万円。住宅ローンは数年前に完済しています。

 

美智子さんも結婚後ずっと専業主婦だったわけではありません。子育てが落ち着いてからはパートで働き、現在も週3日ほど勤務しています。

 

夫婦は「退職したら年に何度か旅行しよう」と話していました。ところが退職から半年ほどたったある夜、浩二さんから切り出されます。

 

「これからのことなんだけど、別々に暮らしたいと思ってる」

 

「どういうこと?」

 

「離婚したい」

 

美智子さんには、すぐには意味が飲み込めませんでした。

 

大きなけんかが続いていたわけではありません。ただ、浩二さんは以前から、子どもが独立した後の夫婦関係について考えることが増えていたといいます。

 

「仕事をしている間は家にいない時間が長かった。でも退職して毎日一緒にいるようになって、この先も同じ生活を続けるのか考えるようになった」

 

美智子さんは納得できませんでした。

 

「じゃあ、今まで話していた旅行は何だったの?」

 

「それとこれとは別だと思ってる」

 

その夜は話し合いになりませんでした。

 

美智子さんが最初に考えたのは、お金のことです。

 

退職金は3,600万円あります。自宅もあります。「それなら離婚しても半分くらいは自分のものになるのではないか」。当初は漠然とそう考えていました。

 

しかし調べ始めると、話はそれほど単純ではありませんでした。

 

財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持した財産を離婚時に分ける制度です。名義が夫だけであっても対象になる財産がありますが、すべての財産を機械的に半分にする制度ではありません。

 

2026年4月施行の改正民法では、財産形成への寄与は、異なることが明らかでない限り夫婦で等しいものとされました。また、同日以降に離婚した場合、財産分与を家庭裁判所に請求できる期間は離婚後5年となっています。

 

退職金についても、婚姻期間と勤務期間の重なりなどによって財産分与の対象になる場合があります。ただし、「退職金3,600万円だから妻に1,800万円」と自動的に決まるわけではありません。

 

厚生労働省『令和7年人口動態統計』によると、2025年の離婚は17万9,068組。このうち同居期間20年以上の離婚は3万9,886組でした。長年連れ添った末に離婚を選択する夫婦は、決して少なくありません。

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