「来てほしくないわけじゃない」68歳で初めて伝えた本音
お盆になると、予定どおり翔太さん一家がやってきました。
孫たちは到着するなり「おばあちゃん、今年もプール行こう」と喜びます。明美さんも笑って応えました。
それでも3日目の夜、食器を片付けながら和彦さんにこぼしました。
「旅行、行きたかったね」
「来年行けばいいだろう」
「来年も同じことにならない?」
明美さんが引っかかっていたのは、今回だけではありません。
前年には友人との食事を断り、その前の年には夫婦で予定していた温泉旅行を短縮しました。息子一家から「帰る」と連絡が来れば、それに合わせて予定を空ける。それがいつの間にか当たり前になっていました。
最終日の夜、明美さんは翔太さんに話しました。
「来年のお盆なんだけど、私たちも旅行に行くかもしれないからね」
翔太さんは意外そうな顔をしました。
「じゃあ、帰る時期ずらせばいい?」
その答えを聞いて、今度は明美さんが驚きました。
「ずらせるの?」
「もちろん。お盆に帰らなきゃいけないと思ってただけだから」
息子一家にとっても、「毎年お盆は実家へ帰る」ことが習慣になっていただけでした。明美さんたちがそのために予定を変更しているとは知らなかったといいます。
「私たちが勝手に『帰省するなら家にいなきゃ』と思っていた部分もあったんですよね。息子も、私たちは毎年待っていると思っていたみたいです」
翌年からは、春ごろにお互いの夏の予定を確認することにしました。
帰省する年もあれば、息子一家とは別の時期に会うこともあります。宿泊中の食事も毎回手作りせず、外食や総菜を利用するようになりました。
子どもや孫との時間を楽しみにすることと、夫婦自身の予定を持つことは両立できます。一方が毎回予定を譲る形が続けば、それが本人たちの望む過ごし方なのか、単なる習慣なのかは分かりにくくなります。
帰省の時期や滞在日数、迎える側の負担は、家族によって異なります。「今年も例年どおり」と決める前に、それぞれの予定を確認する。そんな小さなやり取りが、家族との時間と自分たちの時間をどちらも大切にすることにつながるのかもしれません。
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