「また今度連れていくよ」息子の連絡を待つ73歳父
「孫に会いたいんですよ。でも、自分から『今週行っていい?』とは聞けなくなりました」
そう話すのは、雅人さん(仮名・73歳)です。
3年前に妻を亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約16万円で、住宅ローンを完済したマンションに住んでいます。
雅人さんには45歳の一人息子・直樹さん(仮名)がいます。直樹さんは妻と、小学2年生と5歳の子どもの4人暮らし。車で30分ほどの距離です。
妻が亡くなった翌年に下の孫が生まれました。
「家の中が静かになった時期だったので、孫に会うのが本当に楽しみでした」
最初のころは、息子夫婦から「今度の日曜日来る?」と連絡があり、月に2、3回ほど遊びに行っていました。
雅人さんも孫に菓子や玩具を買い、昼食をごちそうすることがあります。上の孫の運動会にも呼ばれました。
そのうち、雅人さんから連絡することも増えていきます。
「日曜、何か予定ある?」
「近くまで行くから寄っていい?」
直接「孫に会いたい」と言うのは照れくさく、そんな言い方をしていたそうです。
ある日曜日、朝に連絡すると、息子から「今日は家でゆっくりする予定だから、また今度でもいい?」と返信がありました。
それ自体は、雅人さんも気にしませんでした。ところが数週間後、息子と2人で食事をした際、思いがけない話をされました。
「父さんに悪気がないのは分かってるんだけど、来る回数、ちょっと減らしてもらってもいいかな」
雅人さんは戸惑いました。
「そんなに行ってたか?」
「月に何回かだけど、うちも土日に買い物したり、4人だけで出かけたりしたいから」
さらに息子から、「妻も、毎週のように『今週は来るのかな』って気にするようになってる」と聞かされました。
内閣府『令和4年度 高齢者の健康に関する調査』では、65歳以上の人が家族や友人と会話する頻度について、「ほとんど毎日」が70.8%を占める一方、「週に1回」が5.5%、「月に1~2回」が3.9%、「ほとんど会話をしない」が2.3%となっています。高齢期において、家族を含む周囲との交流が日常の一部になっている人は少なくありません。
雅人さんにとっても、孫との時間は妻を亡くしてからの生活の大きな楽しみになっていました。
