「今日も声を出していない」5連休で初めて気づいたこと
4日目、由美子さんは館内のレストランで昼食を取りました。
注文するときに店員と交わした「コーヒーもお願いします」という言葉が、その日初めて口にしたまとまった会話だったそうです。
以前は買い物に出る必要があり、ゴミを出せば近所の人に会い、体操教室へ行けば知人と話しました。当時は意識していなかったそうした機会が、住み替え後には少なくなっていました。
内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、65歳以上の近所付き合いでは84.6%が「会えば挨拶をする」、61.3%が「外でちょっと立ち話をする」と回答しています。何気ない近所付き合いも、人と接する機会の一つになっています。
連休が明けると、由美子さんはマンションの掲示板にあった月2回のウォーキング会に申し込みました。
最初から友人をつくろうと思ったわけではありません。
「予定が一つあれば、とりあえず着替えて外に出ますから。それくらいでいいと思ったんです」
数ヵ月後には、ウォーキング会で知り合った同年代の女性と、帰りにコーヒーを飲むことも増えました。以前住んでいた地域の友人とも、月に一度程度会う日を決めています。
娘一家に会う回数を増やしてもらおうとは考えませんでした。
「娘には娘の生活がありますから。誰かに寂しさを埋めてもらうより、自分の予定を少し作ったほうが気楽でした」
シニア向けの住まいには、バリアフリーや見守りなど、一人暮らしを続けるうえで安心につながる設備やサービスを備えたものがあります。ただし、そこで人との交流がどの程度生まれるかは、住まいによっても本人の過ごし方によっても異なります。
買い物、仕事、地域活動など、それまで自然に生まれていた人との接点は、暮らし方が変わることで減る場合があります。住み替えを考える際には、建物の設備や立地だけでなく、「そこで普段、誰とどのように関わって暮らすのか」まで想像しておくことも大切なのかもしれません。
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