存在を知られているのにもかかわらず、あまり利用されていない贈与税の配偶者控除。今回はその活用方法などを見ていきましょう。

配偶者への居住用不動産の贈与は2110万円まで無税

配偶者への居住用不動産の贈与については、2000万円まで非課税とする配偶者控除があります。暦年贈与の非課税枠110万円と合わせれば、2110万円までが無税で贈与できます。この特例のポイントは、①居住用土地・建物(または取得するための現金)の贈与であること、②結婚してから20年以上経過していること、の2つです。

 

贈与税の配偶者控除はよくその存在を知られているにもかかわらず、あまり使われていない印象があります。生前贈与の配偶者控除を使った最も基本的な使い方は、たとえば次のようなものがあります。

 

子がすでに自宅を所有していて、今後子との同居も見込めない親夫婦がいたとします。この場合、自宅の子への相続が問題になります。自宅の400㎡の土地と建物がすべて父名義のまま、父が亡くなり一次相続が発生したとします。母が小規模宅地等の特例を使って240㎡を相続し、子が残りの160㎡を相続しました。子の相続財産額は3200万円となりました。

 

一方、父の生前に自宅の土地100㎡と建物の25%を、配偶者贈与の非課税枠2110万円を適用して母に贈与したとします。そのうえで、父が亡くなり一次相続が発生しました。すると、母親が同じように240㎡を相続した場合、すでに100㎡は母自身のものですから、子は残りの60㎡だけを相続することになります。そうすると相続財産の額は1200万円ほどになるのです。

 

生前贈与をした2110万円分が、ほとんどそのまま子の相続財産額に反映されていることがわかるでしょうか。相続財産が減ればその分だけ相続税額も減りますから、これは相続税対策として有効といえます。結果的には、財産は母に多く分配される形になりますから、二次相続での子の税額がどのようになるのかというところと比較・検討したうえで、実施を判断することが必要です。

孫への教育資金は「1500万円まで非課税」特例を活用

地道な暦年贈与では時間的に十分な贈与ができないという高齢者に、最適な特例があります。平成25年4月1日から平成27年12月31日までの期間限定(平成31年3月31まで延長)なのですが、30歳未満の孫への教育資金の一括贈与が1500万円まで非課税になります。高齢者にとっては相続財産を大きく減らすことができ、若い世代にとっては金銭的な援助が受けられて、双方にとって嬉しい話です。

 

教育資金に該当するのは、授業料や入学金、修学旅行費など、学校に直接支払われるお金です。これは1500万円まで非課税です。そのうち500万円までであれば、塾や習い事の月謝や施設使用料など、学校以外に対して直接支払われる金銭も教育資金とすることができます。

 

ただし、孫が30歳になるまでに贈与された資金を使いきれなかった場合は、その残高に与税が課税されてしまいます。その点を考慮に入れて、本当にこの制度を利用するのが自分の家族に適しているのかどうかを検討してみることが大事です。

 

この特例を使いたい時は、贈与を受ける孫やひ孫(30歳未満)が金融機関との契約を結び、教育資金口座を開設します。そして、贈与によって得た金銭をその口座に預け入れます。孫は資金が必要になった時、払い出し請求をして口座から金銭の払い出しを受けます。最後に、金融機関を経由して教育資金非課税申告書を税務署に提出すれば、特例が成立します。教育資金口座の開設は、銀行等、信託銀行、証券会社で可能です。

 

ところで、従来の法律でも、そのお金が教育費として適切に使われたことが記録として証明できれば、この特例を使わずに祖父母が孫の教育費を援助しても贈与税はかかりません。ただし、従来の場合は、教育費が必要になった時にその都度、贈与する必要があります。期限付きの特例のように1500万円を一括で贈与できないので、相続まで猶予のない人にとっては物足りないかもしれません。

本連載は、2013年11月1日刊行の書籍『相続税対策は顧問税理士に頼むと必ず失敗する』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税対策は 顧問税理士に頼むと必ず失敗する

相続税対策は 顧問税理士に頼むと必ず失敗する

田中 誠

幻冬舎メディアコンサルティング

税のプロとして認識されている税理士にも得意不得意分野があります。特に不動産を含む資産税に関する対策は、その実務経験がものをいいます。つまり、相続税対策はどの税理士に頼むかで、結果が大きく変わるのです。 本書は、…

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