ガバナンス改革のカギとなる「透明性」
ガバナンス改革は、理事会や監事などの組織を形式的に整えるだけでは十分ではありません。重要なのは、それらが実際に機能し、組織の経営をチェックできる仕組みをつくることです。
特に、組織の内部を外部からチェックする監事の役割は重要です。監事が実効性のある監査を行うためには、次のような条件が求められます。
● 適任者の選任:経営や財務について一定の知識・経験を持つ人材を確保すること
● 客観性・第三者性の確保:経営層から独立した立場で監査できる環境を整えること
● 監査時間と適正な報酬の確保:十分な時間をかけて監査を行える体制を整えること
● 業務規範の確立:監査の手順や基準を明確にし、継続的に実施できる仕組みをつくること
● 所轄庁・会計監査人との連携:必要な情報を共有し、多角的なチェックを可能にすること
そして、こうしたガバナンスを機能させるうえで欠かせないのが「透明性」です。
組織がどのような経営を行い、どのように資金を使い、どのような成果を上げているのか。その情報が適切に開示されれば、ステークホルダーは組織の活動を客観的に評価できます。
透明性は単なる情報開示の問題ではありません。税金や保険料などによって支えられている社会保障だからこそ、その資金がどのように使われているのかを明らかにすることは、社会からの信頼を維持するためにも重要です。
社会保障を次世代につなぐために
社会保障の持続可能性を考えるとき、財源の問題は避けて通れません。しかし、財源を増やすことや給付を抑制することだけでは、問題のすべてを解決することはできません。
実際に医療や介護のサービスを提供している組織が、限られた人材や資金をどのように活用し、サービスの質を維持しながら生産性を高めていくのか。そのための経営とガバナンスのあり方も問われています。
非営利組織だからこそ、経営者だけでなく、受益者、従業員、地域社会、保険者、行政など、多様なステークホルダーの声を経営に反映させる仕組みが必要です。
すべての組織に一律の仕組みを求めるのではなく、まずは自発的にガバナンスや経営の改善に取り組む「トップランナー」を増やしていくことも一つの方法でしょう。
社会保障は、政府だけが支えるものではありません。医療機関や介護施設などのサービス提供者、保険者、そこで働く人、そしてサービスを利用する私たち一人ひとりが関わる社会的な仕組みです。
だからこそ、社会保障の持続可能性を考える際には、制度の数字だけでなく、その制度を実際に動かしている組織にも目を向ける必要があります。
見えにくいところで社会保障を支えている「組織のガバナンス」。そのあり方を見直すことが、将来の医療や介護を守るための重要な一歩となるのではないでしょうか。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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