非営利組織に求められる「誰のためのガバナンスか」
では、なぜ非営利組織ではガバナンスが重要なのでしょうか。
株式会社には、株主という明確な利害関係者が存在します。株主は経営を監視し、場合によっては経営者の交代を求めることもできます。
一方、非営利組織には、株式会社のような意味での株主が存在しません。そのため、経営を誰が監督し、組織の意思決定が適切に行われているかを、どのようにチェックするのかが重要な課題となります。
この点について、非営利組織のガバナンスを考える際には、特定の経営者だけではなく、組織を取り巻くさまざまなステークホルダーに目を向ける必要があります。
「非営利組織における重要なステークホルダーとして、受益者、資源提供者、従業員、地域社会、政府等が考えられるが、このような多様なステークホルダーの権利、ニーズ、期待及び懸念がバランスよく配慮され、満たされるための仕組みとして、組織ガバナンスが構築されるべきである。」
つまり、非営利組織のガバナンスは、特定の個人や組織の利益だけを守るためのものではありません。サービスを利用する人、働く人、地域社会、そして公的な資金を提供する政府など、さまざまなステークホルダーの視点を経営に反映させる仕組みとして考えることが重要です。
「保険者」は単なる支払者ではない
もう一つ重要になるのが、医療保険や介護保険などを運営する「保険者」の役割です。
イギリスのNHSファウンデーション・トラストでは、患者や職員などが組織のガバナンスに関わる仕組みが設けられています。こうした海外の事例からは、サービスを受ける側や現場で働く側を、組織運営の重要なステークホルダーとして位置づける考え方を学ぶことができます。
一方、日本では、多数の保険者と多数のサービス提供主体が存在し、複雑な関係を構築しています。そのため、海外の制度をそのまま導入することは容易ではありません。
だからこそ、日本の制度に合った形で、保険者の役割を見直していくことが重要になります。
保険者は、保険料を集め、レセプトを審査・支払するだけの存在ではありません。社会保障という公共的な資源を預かる立場として、サービス提供主体と対話し、より効率的で質の高いサービスを実現するための役割を担うことも期待されます。
大規模な法人と保険者が、それぞれの立場から経営やサービスの改善について対話することは、日本の社会保障における新たな取り組みにつながる可能性があります。
