「じいじ、プレゼントは?」孫の誕生日会で引っかかった一言
一人暮らしをする敏夫さん(仮名・73歳)の年金収入は月約16万円です。妻を6年前に亡くし、現在はローンを完済したマンションで暮らしています。
一人息子の健太さん(仮名・45歳)は妻と2人の子どもと暮らしており、敏夫さんの自宅からは電車で1時間ほど。孫は10歳と7歳です。
敏夫さんは孫の誕生日やクリスマス、入学などの節目には、欠かさずお祝いをしてきました。
誕生日なら1万円ほどのプレゼントと現金。入学時には数万円を包み、家族で外食するときには「今日はじいじが出すよ」と会計を引き受けることもありました。
「孫が喜ぶなら、それでいいと思っていました。年に何回かですし、会えるのも楽しみでしたから」
ある日、下の孫の7歳の誕生日会に呼ばれました。敏夫さんが息子宅へ着くと、テーブルには料理とケーキが並び、孫たちは楽しそうに走り回っています。
持参した紙袋を玄関脇に置いてリビングへ入ると、孫がすぐに近寄ってきました。
「じいじ、プレゼントは?」
「ちゃんと持ってきたよ」
そう答えてプレゼントを渡すと、孫は喜んで包装を開け始めました。それだけなら、いつもの光景でした。
ところが、その日は敏夫さん自身が会話に入る時間がほとんどありませんでした。孫たちはプレゼントを開けるとゲームを始め、息子夫婦は料理の準備や片づけで忙しそうにしています。
敏夫さんが学校のことを聞いても、「普通」「楽しいよ」と返ってくる程度。食事が終わるころには、孫たちは再び別の部屋へ行ってしまいました。
誰かに冷たくされたわけではありません。健太さんも「来てくれてありがとう」と言い、帰りには妻が玄関まで見送りました。
それでも帰りの電車で、敏夫さんは考えていました。
「俺、今日は何しに行ったんだろう」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上が日常生活で家族や知人から頼られる内容として、「子や孫の世話」は26.0%、「お金の援助」は11.4%でした。一方、「喜びや悲しみを分かち合うこと」は33.6%となっています。高齢者と家族との関わり方は、金銭的な援助だけではありません。
敏夫さんの場合も、お祝いを出すこと自体が嫌だったわけではありません。気になったのは、それが家族と会う目的の中心になっているように感じたことでした。
