「仕送りしようか?」母の申し出を息子が断った理由
翌朝、美智子さんは翔太さんに「毎月少し仕送りしようか?」と持ちかけました。しかし、翔太さんはすぐに断りました。
「いらないよ。赤字じゃないし」
翔太さんは給料が入ると、まず2万円を別口座に移しています。
家賃などを払い、残った範囲で生活するため、食費は月3万円程度を目安にしているそうです。スーパーへ行くのは週に2回ほど。肉や魚は安い日にまとめて買って冷凍し、弁当もできるだけ持参します。
節約する理由を聞くと、「引っ越しとか転職とか、何かあったときにお金がないほうが怖いから」と答えました。
総務省の『家計調査』では、単身世帯全体の2025年の月平均消費支出は17万3,042円でした。もちろん、これは年齢や収入、住居形態などが異なる世帯を含む平均であり、一人暮らしに必要な金額を示すものではありません。
美智子さんは、息子が食べるものにも困っているのではないかと心配しましたが、話を聞いていくうちに見方が変わりました。
「私が26歳のころは実家にいたので、家賃も食費も家に少し入れるだけでした。同じ年齢でも、息子は全部自分で払って、そのうえで貯金しているんですよね」
帰る日の昼、美智子さんは近くのスーパーへ行き、肉や魚、翔太さんが普段はあまり買わない果物などを買いました。
「これくらいは置いていくから」
「だから大丈夫だって」
そう言いながらも、翔太さんは笑って受け取ったそうです。
その後、美智子さんが定期的に仕送りを始めることはありませんでした。代わりに、電話をしたときには「お金足りてる?」ではなく、「最近何食べてる?」と聞くようになったといいます。
離れて暮らす家族の生活は、収入の数字だけでは分かりません。一方で、支出を抑えているからといって、必ずしも生活に困っているとも限らないでしょう。
収入、家賃、貯蓄したい金額、何にお金を使いたいかによって、同じ月収でも暮らし方は変わります。親にとっては心配に見える節約も、本人にとっては将来の選択肢を増やすための生活設計かもしれません。親元を離れた子どもの暮らしを知るには、通帳や給与の数字だけでなく、そのお金をどう使っているのかまで見ることが必要なのでしょう。
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