「2人には広すぎない?」子どもが独立して残った4LDK
浩一さん(仮名・68歳)と妻の由美子さん(仮名・67歳)は、夫婦合わせて月約20万円の年金で暮らしています。
以前の住まいは、30代で購入した郊外の4LDKの一戸建て。2人の子どもはすでに独立し、住宅ローンも完済していました。
子ども部屋はほとんど使わなくなりましたが、掃除は必要です。庭の草取りや植木の手入れ、雨どいの掃除などもありました。
ある日、2階の元子ども部屋を掃除していた由美子さんが言いました。
「この家、2人には広すぎない?」
浩一さんも、以前から同じことを感じていました。それでも、すぐに売却を考えたわけではありません。
「せっかくローンを払い終えたのに、今さら家賃を払うのもなあ」
何より、長年暮らした家です。子どもたちが小さかったころの記憶もあり、手放すことには抵抗がありました。
総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、高齢者のいる夫婦のみの世帯の87.6%が持ち家に住んでおり、借家は12.3%です。高齢夫婦にとって、持ち家から賃貸住宅へ移ることは多数派の選択ではありません。
夫婦が本格的に住み替えを考えるきっかけになったのは、由美子さんが友人の住む団地を訪ねたことでした。駅から徒歩圏内にあるUR賃貸住宅で、スーパーやドラッグストア、図書館も歩いて行けます。
友人の部屋は2DK。由美子さんは最初、「思ったより狭い」と感じました。
ところが帰宅すると、自宅との違いが気になりました。
最寄り駅まではバスを使い、スーパーへ行くにも車が便利です。広い家は快適でしたが、その家を維持するために時間も手間もかかっています。
「家の中は広いけど、ここに住んでいると出かける場所が限られるね」
その言葉をきっかけに、夫婦は団地への住み替えを具体的に検討するようになりました。
国土交通省『令和5年住生活総合調査』では、65歳以上の夫婦世帯が今後の住み替えで住宅周辺の環境について重視する点として、「日常の買物などの利便」が上位となっています。また住宅そのものについても、「高齢者への配慮(段差がない等)」や「広さや間取り」などが重視されています。
半年後、夫婦は一戸建てを売却し、以前から見ていた団地の2DKへ移りました。
