仕事を失った54歳息子へ月10万円…「大丈夫」と言い続けた母
一人暮らしの節子さん(仮名・79歳)の年金は、月約12万円です。
54歳の一人息子・浩二さんは妻と離婚後、一人で暮らしていました。長く勤めていた会社を辞めたあと転職したものの、新しい職場になじめず、1年ほどで退職。次の仕事を探していました。
貯蓄も減り、家賃や生活費の支払いが厳しくなっていることを知った節子さんから、「仕事が決まるまで少し出そうか」と申し出たのが始まりでした。
金額は月10万円。
「そんなにもらえないよ」と浩二さんは断りましたが、節子さんは「お母さんは年金もあるし、貯金もあるから。半年くらいなら大丈夫」と言いました。
節子さんには、夫から相続した分などを含めて約1,800万円の預貯金がありました。月10万円の仕送りは年金から出していたわけではなく、預貯金を毎月取り崩して送っていたのです。
半年ほどで仕事を見つけるつもりだった浩二さんですが、再就職は思うように進みませんでした。短期の仕事を始めても収入は安定せず、節子さんからの仕送りはその後も続きます。
「もう大丈夫」と言えないことに後ろめたさはありました。それでも母親からは毎月決まった日に10万円が振り込まれます。
「母には貯金があるし、持ち家だから、すぐに困ることはないだろう」
浩二さんは、そう考えるようになっていました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で子や孫の生活費を「ほとんど負担している」人は6.6%、「一部を負担している」人は18.6%で、合わせて25.2%です。75~79歳でも23.7%が子や孫の生活費を何らかの形で負担しています。
仕送りが始まって1年3ヵ月ほどたったころ、浩二さんは久しぶりに実家を訪れました。
昼食を買っていこうと連絡すると、節子さんは「何もいらないよ。家にあるもので食べよう」と言います。
実家で出てきたのは、ご飯とみそ汁、冷蔵庫に残っていた漬物と納豆でした。
「これだけ?」
浩二さんが聞くと、「年を取ったらそんなに食べないのよ」と節子さんは笑いました。
ところが台所を見ると、冷蔵庫の中は以前より明らかに空いていました。さらに浩二さんは、真冬なのにリビング以外の暖房をほとんど使わず、傷んでいた炊飯器も買い替えずに使っていることに気づきます。
「母さん、無理してない?」
節子さんはしばらく黙ったあと、「ちょっと節約してるだけ」と答えました。
