「必要になったら使いなさい」息子のため残していた140万円
一人暮らしの和子さん(仮名・68歳)は、月約18万円の年金で生活しています。
43歳の一人息子・拓也さんは結婚しており、妻と小学生の子どもとの3人暮らし。車で1時間ほど離れた場所に住んでいます。
140万円の話が出たのは、今から8年前でした。
和子さんが長年積み立てていた定期預金の一つが満期になり、拓也さんとの会話のなかで、「これはあなたのために取っておこうと思ってる」と話したのです。当時、拓也さんは結婚したばかりでした。
「今すぐじゃなくても、家を買ったり、何か必要になったりしたときに使いなさい」
その金額が約140万円でした。拓也さんは「まだ大丈夫だから、お母さんが持っていて」と答え、その後、お金を受け取ることはありませんでした。
和子さんも専用の口座を作ったわけではありません。ただ、自分の預貯金のうち140万円ほどは「息子に渡すお金」と考えていたそうです。
それから8年。和子さんは仕事を辞め、収入は年金だけになりました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯では、1ヵ月の実収入は平均13万1,456円、可処分所得は11万8,465円。一方、消費支出は14万8,445円です。平均では、可処分所得を消費支出が約3万円上回っています。
和子さんは平均より年金額が多いものの、まとまった支出まで毎月の年金だけで賄えるわけではありませんでした。
ある年にはエアコンと冷蔵庫が相次いで故障。さらに、自宅マンションでは修繕積立金とは別に一時金の徴収もありました。
それだけではありません。仕事を辞めたあと、和子さんは以前から行きたかった北海道や九州へ旅行し、友人との温泉旅行にも出かけるようになりました。
「最初は140万円には手をつけないつもりでした。でも、考えたら私のお金でしょう。拓也ももう40代で、自分で生活している。それなら私が元気なうちに使ってもいいかなって」
一度に140万円を使ったわけではありません。
数年かけて預貯金から生活費や家電代、旅行代などを出すうち、「息子のため」と考えていた140万円分も含めて使うようになりました。
