「最近、2階に行かなくなったね」築35年の家で気づいた変化
恵子さん(仮名・73歳)と夫の正明さん(仮名・74歳)は、年金収入が夫婦で月約31万円、預貯金は約4,700万円。2人の子どもはすでに独立し、30代で購入した4LDKの一軒家で暮らしていました。住宅ローンは60代前半で完済しています。
1階にはリビングとキッチン、和室があり、2階には夫婦の寝室と、かつて子どもたちが使っていた2部屋があります。
70歳を過ぎたころ、恵子さんはあることに気づきました。
「最近、2階に行かなくなったね」
洗濯物は1階の庭に干し、日中はほとんどリビングで過ごします。子ども部屋に入るのは掃除をするときくらい。正明さんも、本を取りに2階へ上がるのが面倒になり、よく読むものはリビングの棚へ移していました。
身体的に階段を上れないわけではありません。それでも、掃除機を持って上がったり、洗ったシーツを抱えて下りたりするたび、「この階段、あと何年使うんだろう」と考えるようになりました。
さらに負担だったのが家の維持です。庭の草取り、落ち葉の掃除、2階まである窓の手入れ。築35年を超え、給湯器や外壁などの修繕も必要になっていました。
そんなある日、近所に住む友人がマンションへ住み替えたと聞き、恵子さんは正明さんに「うちも一度、見に行ってみない?」と持ちかけました。
最初、正明さんは乗り気ではありませんでした。
「せっかくローンを払い終えたのに、今からまた家を買うの?」
しかし、試しに内覧した中古マンションで、2人の考えは少し変わります。
玄関からリビング、寝室、浴室まで同じフロアにあり、室内の大きな段差もありません。ゴミ出しは敷地内で済み、庭の手入れも不要です。
「ここなら、洗濯して、しまうところまで全部同じ階なんだ」
恵子さんがそう言うと、正明さんも「確かにこれは楽だな」と答えました。
国土交通省『令和5年住生活総合調査』では、今後の住み替え意向がある65歳以上の夫婦世帯が住宅の質で重視する点として、持ち家では「高齢者への配慮(段差がない等)」が22.4%と最も高く、「広さや間取り」17.1%、「地震に対する安全性」11.7%と続きます。年齢を重ねてからの住み替えでは、広さだけでなく、日々の動きやすさも重要な条件になっています。
2人は半年ほどかけて物件を探し、駅から徒歩10分ほどの3LDKの中古マンションを2,600万円で購入することにしました。
