「水曜日ならお願いできる?」退職後に増えていった孫の予定
修一さん(仮名・66歳)と妻の恵美さん(仮名・65歳)は、夫婦合わせて月約33万円の年金で暮らしています。住宅ローンを完済したマンションに住み、預貯金は約5,200万円あります。
修一さんは65歳で再雇用を終えました。
「やっと2人とも自由になったから、平日に旅行へ行こうって話していたんです」
そんな夫婦には、車で30分ほどの場所に暮らす38歳の長女・真理さんと、小学2年生、5歳の2人の孫がいます。
もともと孫の世話をするのは月に数回程度でした。真理さん夫婦は共働きで、どうしても仕事の都合がつかない日に「保育園のお迎えをお願いしてもいい?」と連絡が来ます。
恵美さんも孫に会えるのがうれしく、快く引き受けていました。ところが、夫婦が仕事を辞めたことをきっかけに、頼まれる回数が少しずつ増えていきます。
「来週の水曜日ならお願いできる?」
「土曜日、2人を見てもらってもいい?」
「上の子の習い事に連れていってもらえる?」
毎日というほどではありません。それでも週に1~2回、何らかの予定が入るようになりました。真理さんも当然のように押しつけていたわけではなく、「無理なら断ってね」と毎回言っていました。
しかし、恵美さんはなかなか断れませんでした。
「仕事なら仕方ないし、私たちは家にいるからって思ってしまうんですよね」
修一さんも車を出し、孫の送迎を手伝いました。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上で日常生活のなかで家族や知人から「子や孫の世話」を頼られている人は26.0%でした。特に女性では74歳まで、この項目を含む家事や家族との関わりで頼られる割合が高くなっています。
夫婦が違和感を覚えたのは、退職から半年ほどたったころでした。
以前から「仕事を辞めたら行こう」と話していた3泊4日の温泉旅行を計画していたとき、恵美さんがカレンダーを見ながら言いました。
「この週は水曜日がお迎えで、金曜日は下の子を預かる約束してる」
「じゃあ、その次の週は?」
「火曜日に習い事へ連れていくことになってる」
修一さんは思わず苦笑しました。
「俺たちの人生、いつから孫中心になったんだろうな」
恵美さんはその言葉に、すぐには返事ができなかったといいます。
