(※写真はイメージです/PIXTA)

老後に向けて十分な資金を準備することは、大きな安心につながります。しかし、退職によって失われるのは毎月の給与だけではありません。毎朝出勤する場所や仕事仲間との会話、自分に任された役割もなくなります。経済的な余裕があっても、退職後の時間をどう過ごすかという別の問題に直面することがあります。

「毎日が日曜日って、こんなに長いのか」退職半年で感じたこと

明夫さん(仮名・67歳)は、65歳まで会社員として働いていました。

 

妻との2人暮らしで、子ども2人はすでに独立。住宅ローンを完済した一戸建てに暮らし、退職金を含めた金融資産は約6,000万円あります。夫婦の年金は月約28万円です。

 

「老後のお金については、かなり心配して準備してきたつもりです」

 

50代から家計を見直し、住宅ローンを繰り上げ返済。退職後に必要な生活費も夫婦で計算していました。

 

そのため、会社を辞めた直後は開放感のほうが大きかったといいます。

 

平日に妻と温泉へ行き、以前から欲しかったカメラも購入しました。朝は目覚まし時計をかけず、気が向けば電車で出かけます。

 

「最初の2ヵ月くらいは最高でした。もう月曜日を嫌がらなくていいんですから」

 

ところが、半年ほどたつと様子が変わってきました。

 

旅行は毎週行くものではありません。カメラを持って出かけても、夕方には帰宅します。

 

朝食を食べ、新聞を読み、散歩をしてもまだ午前11時。昼食後にテレビをつけ、時計を見ると午後1時半でした。

 

「お金はある。でも暇すぎる……」

 

冗談交じりに妻へそう話すと、「何かやればいいじゃない」と返されました。

 

もっと旅行をすることもできます。新しい趣味を始める余裕もあります。しかし、明夫さんが欲しかったのは、単に時間を消費する方法ではありませんでした。

 

「会社にいたころは、今日はこれをやらなきゃ、明日は会議だって、嫌でも予定があったでしょう。辞めたら、誰からも何も頼まれない。それが最初は楽だったのに、だんだん物足りなくなったんです」

 

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で継続的に何らかの社会的活動をしている人は61.4%。内訳では「就労・就業」が43.6%、「趣味やおけいこ事」が19.7%、「地域社会活動」が13.8%、「ボランティア活動」が6.7%となっています。一方、「特に活動はしていない」と答えた人も36.4%でした。

 

明夫さんも、退職から1年近くは、その36.4%の側にいました。そんな生活が変わったのは、自治会の役員から声をかけられたことがきっかけでした。

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