「もう毎回はあげないね」孫へのお小遣いをやめた72歳
「おばあちゃん、ありがとう!」
孫たちのそんな声を聞くのが、和代さん(仮名・72歳)の楽しみでした。
和代さんは7年前に夫を亡くし、現在は一人暮らし。年金収入は月約14万円、預貯金は約1,300万円あり、住宅ローンを完済したマンションで暮らしています。
一人娘の由香さん(仮名・45歳)は、夫と高校生、中学生の子どもとの4人暮らし。車で40分ほどの距離に住んでおり、以前は月に1回ほど家族で和代さんの家を訪ねていました。
そのたび、和代さんは孫2人に5,000円ずつお小遣いを渡していました。外で食事をすれば会計を引き受け、誕生日やクリスマスには別にプレゼントも用意します。
「夫がいたころからそうだったので、特に疑問に思っていませんでした。孫が喜んでくれるなら、それでよかったんです」
ところが70歳を過ぎたころから、自分の家計が気になるようになりました。
マンションの管理費や修繕積立金に加え、固定資産税、家電の買い替えなど、年金だけでは収まらない支出もあります。孫へのお小遣いだけなら月1万円程度でも、外食や誕生日、進学祝いまで含めて通帳を見返すと、年間では思っていた以上の金額になっていました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で子や孫の生活費を「ほとんど負担している」人は6.6%、「一部を負担している」人は18.6%で、合わせて25.2%です。70~74歳に限っても22.9%が何らかの負担をしています。
和代さんは娘に、「これからは会うたびにお小遣いを渡すのはやめるね」と伝えました。由香さんは「いいよ。今まで十分してもらったんだから」と答え、孫たちも特に不満を口にしませんでした。
ところが、それから少しずつ会う回数が減っていきます。
高校生の孫は部活動、中学生の孫は塾や友人との予定が増え、家族4人で和代さんの家へ来る機会は以前ほどなくなりました。
和代さんが「今度の日曜は?」と誘っても、「今週は部活があるみたい」「また予定を見て連絡するね」と返ってくることが続きます。
そして迎えた5月の母の日。例年なら由香さんが菓子や花を持って訪ねてきましたが、今年はメッセージが届いただけでした。
その翌月の72歳の誕生日には、夕方になっても連絡がありません。夜になって由香さんから「誕生日だったね、おめでとう」とメッセージが届きました。
「お小遣いをやめたから、来なくなったのかな」
和代さんは初めて、そんなことを考えました。
