(※写真はイメージです/PIXTA)

住み慣れた一軒家は、老後もそのまま暮らし続けられるとは限りません。年齢を重ねるにつれて、庭や建物の手入れだけでなく、買い物や通院のための移動が負担になることもあります。元気なうちに将来の暮らしを考え、長年住んだ家を手放す夫婦もいます。

「病院まで15分」駅近の2LDKを選んで変わった毎日の移動

夫婦が探したのは、同じ県内の中心市街地にある中古マンションです。

 

条件は明確でした。スーパーと駅が徒歩圏内にあり、病院へ公共交通機関で無理なく通えること。子どもが帰省するための部屋を残すことより、夫婦2人のこれからの生活を優先しました。

 

いくつか内見したなかで目に留まったのが、駅から徒歩8分ほどの2LDKです。スーパーは徒歩5分、バス停はマンションの近くにあり、総合病院まではバスを使って約15分でした。

 

「病院まで15分か。ここなら、車がなくても行けるね」

 

隆夫さんのその言葉が、住み替えを決める最後の一押しになりました。

 

国土交通省『令和5年住生活総合調査』でも、65歳以上の世帯が過去5年間に住み替えた理由として「高齢期の住みやすさ」が挙げられています。また、今後の住み替えで重視する項目について、65歳以上の世帯では「高齢者への配慮」や「日常の買物などの利便」が上位となっています。

 

一軒家は約1,700万円で売却し、中古マンションは約1,900万円で購入。差額に諸費用やリフォーム代も加わったため、預貯金から約500万円を充てました。

 

「家を小さくするのに、お金を足すのかとは思いました。でも、安い家を探すことより、この先暮らせる場所に移ることが目的だったので」

 

引っ越して半年。4LDKから2LDKになり、持っていた家具の多くは処分しました。それでも和美さんが「狭くなった」と感じることは、思ったほどなかったといいます。

 

むしろ変わったのは、外出の仕方でした。

 

以前は牛乳一本を買うにも車を出していましたが、今は夫婦で歩いてスーパーへ向かいます。駅前の飲食店で昼食をとり、そのまま図書館へ寄ることも増えました。

 

隆夫さんは引っ越しを機に、車も手放しました。

 

「運転できるうちに手放すなんて、最初はもったいないと思いました。でも、車がなくても困らない場所に先に移ったから、やめられたんでしょうね」

 

もちろん、長年暮らした家への未練が消えたわけではありません。庭の写真を見ると懐かしくなり、子どもたちが帰省しても以前のように家族全員で泊まることは難しくなりました。

 

それでも和美さんは、「元気なうちに住み替えを決めてよかった」と話します。

 

「今なら自分たちで家を探して、荷物を片づけて、引っ越せました。もっと年を取ってから同じことができたかは分かりません」

 

夫婦が考えたのは、車を運転できなくなったあとも、買い物や通院を自分たちで続けられるかということでした。

 

庭のある4LDKから、病院まで15分の2LDKへ。住まいそのものは小さくなりましたが、移動手段が変わっても生活を続けられる場所を選んだことが、71歳の夫婦にとって「これからも自分たちで暮らす」ための準備になっています。

 

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