孫に会えなくなって2年
山田正雄さん(72歳)は、地方で妻と二人暮らしをしています。
若いころに美容師として独立し、自分の店を構えて長年働いてきました。店舗はすでに畳んでいますが、昔からの馴染み客の自宅や介護施設などを訪問する「出張美容師」として、現在も仕事を続けています。
自営業だった山田さん夫婦の公的年金は、二人合わせて月18万円ほど。山田さん自身の年金は月11万円程度です。決して余裕のある老後とはいえませんが、出張美容師として月10万円ほどの収入があるため、働けているうちは生活に困るほどではありません。
そんな山田さんには、県外で暮らす息子が一人います。息子は結婚して家庭を持ち、12歳になる子どもを養っています。
山田さんにとってなによりの楽しみは、息子夫婦が家族揃って帰省してくるお盆や正月、GWでした。帰省の時期が近づくと、山田さんははりきって、豪華な寿司やオードブル、さらには孫のお小遣いを用意します。集まった親戚の食事代も山田さん夫婦が負担するため、年間で20万円以上使うことも珍しくありませんでした。
「私たちだって、そんなに余裕があるわけじゃないんだから」「あんた仕事辞めたらどうやって生活してくの?」などと妻から小言をいわれても、「孫が来るんだから、このくらいいいだろ」と山田さんは聞く耳を持ちません。
ところが、以前は決まってお盆、正月、GWに帰ってきていた息子一家が、ぱたりと帰省しなくなったのです。
「仕事が忙しい」「子どもの習い事がある」
なにかしら理由を付けて帰省を断られ続け、気づけば最後に孫の顔を見た日から、2年近くが経とうとしていました。
そんなある日、山田さんは息子に電話をかけます。
「今年はばあちゃんの十三回忌もある。お盆に合わせてやろうと思うから、帰ってこいよ」
しかし、息子から返ってきた答えは、山田さんが期待していたものではありませんでした。
