「来週もお願いできる?」月3回になっていた片道2時間の往復
「ばぁば、今度はいつ来るの?」
帰り際、6歳の孫にそう聞かれるたび、和子さん(仮名・72歳)は「またすぐ来るよ」と答えていました。
和子さんは夫を7年前に亡くし、現在は一人暮らし。年金は月約18万円、預貯金は約1,500万円あります。
長女の裕美さん(仮名・42歳)は夫と、小学1年生の長男、4歳の長女との4人暮らし。和子さんの自宅からは電車を乗り継いで片道約2時間かかります。
孫が生まれたころ、和子さんが娘宅へ行くのは月に1回程度でした。ところが裕美さんが仕事に復帰すると、少しずつ頼まれることが増えていきました。
「来週の土曜日、仕事になっちゃったんだけど来られる?」
「上の子の学校行事があるから、下の子を見てもらえないかな」
和子さんも、予定がなければ引き受けました。
朝7時前に家を出て、9時ごろ娘宅に到着。孫と遊び、昼食を作り、ときには夕食の準備まで済ませます。娘夫婦が帰宅してから自宅へ戻ると、午後9時を過ぎることもありました。
それでも当初は苦にならなかったといいます。
「孫に会えるし、娘も助かる。それならいいと思っていました」
交通費は往復約3,000円。裕美さんが出そうとすることもありましたが、和子さんは「これくらいいいよ」と断ることがほとんどでした。
気づけば訪問は月2回、多い月には3回ほどに増えていました。
孫の誕生日や入学祝い、お年玉なども合わせると、年間ではそれなりの出費になります。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で子や孫の生活費を「ほとんど負担している」人は6.6%、「一部を負担している」人は18.6%で、合わせて25.2%。また、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げた人も25.8%となっています。子や孫への経済的な支援は、高齢期のお金の使い道の一つです。
和子さんの場合、お金以上に気になるようになったのが移動でした。
今年の夏、娘宅から帰る途中で乗り換えの電車に間に合わず、ホームのベンチに座って次の電車を待っていたときのことです。その日は朝から孫2人を連れて公園へ行き、夕方には買い物と夕食の準備もしていました。
「あと2時間かけて帰るのかと思ったら、急にしんどくなって。これをいつまで続けるんだろうって思ったんです」
自宅に着いたのは午後10時近く。翌日は昼過ぎまで何もする気になれませんでした。
それでも数日後、裕美さんから「来週もお願いできる?」と連絡が届きました。和子さんは、すぐに「いいよ」と返信できませんでした。
