ビットコインは常に「アップデート」が可能
ビットコインの抱える課題として、ボラティリティやスケーラビリティそしてスピードを取り上げました。これらを解決するための別のプロジェクトがいくつも立ち上がっていますが、ビットコイン自体もこれらを解決し、より利便性を高めるために日々開発が行われています。
前回、ビットコインはソフトウェアの一種なので、アプリやWEBサービスのようにアップデートしていくことが可能とお伝えしたのは、この部分ですね。バージョンアップにより、ビットコインは進化していく。今までの法定通貨では考えられないことです。これも特定の管理者がおらず分散的管理により民主化されている特徴といえるでしょう。
ビットコインは、これまでにも数多くのアップデートがされてきましたが、ここでは昨今注目されているライトニング・ネットワークについて触れていきます。ライトニング・ネットワークとは、ビットコインの処理できる取引数を拡大し、手数料を下げることで少額の送金も可能とする技術です。
2016年9月現在、まだ開発中ですが、これはすでに提案されていたマイクロペイメント・チャンネルという技術の応用です。まずは、マイクロペイメント・チャンネルについて解説していきます。
マイクロペイメント・チャンネルとは、最初と最後の取引だけをブロックチェーンに記録し、その間の取引はブロックチェーンに記録せず、取引を行う2者間だけの合意だけで自由に行えるというものです。ブロックチェーンに記録しない部分の取引に関しては当然、手数料も必要ありませんし、承認時間や取引数の制限も受けません。そのため、手数料を下回るような10円などの金額の送金および高速取引が可能となります。
有効期限内はいくら取引が行われても手数料ナシ
では利用の流れについて説明します。AさんとBさんがマイクロペイメント・チャンネルを利用しようとした場合、まずAさんとBさんの取引用のアドレスをブロックチェーン上に開設します。このアドレス内に入金されたビットコインは、AさんとBさん2人の合意が取れないと、移動することはできません。
アドレスの開設後、AさんがBさんにお金を送金したい場合は、まずAさんはそのアドレスに10BTCを送金します。この時点で、送金された10BTCは、もうAさんだけの意思だけでは移動できません。この時、取引用のアドレスに有効期限をつけておき、その有効期限が切れると自動的にAさんに返金されるようにBさんの合意と共に設定しておくことで、安全な取引が行えます。
有効期限内は、AさんとBさんの間でいくら取引が行われようが手数料はかかりません。AさんとBさんの間での、一連の送金が終わった段階で、お互いが合意を取ることでAさんとBさんのそれぞれのアドレスに送金が行われます。要は、最初のお互いのビットコインの残高と最終的な残高についてのみ、合意が取れれば取引は成立するという発想です。
この仕組みは、ビットコインでの取引の利便性を向上する優れた仕組みでしたが、取引用のアドレスが特定の2者間でしか開設できないためアドレスが乱立してしまうことが懸念されていました。それを解決したのが次のライトニング・ネットワークです。
これは、非常にシンプルな仕組みで、AさんとBさん、そしてBさんとCさん同士でマイクロペイメント・チャンネルが開設されているなら、AさんとCさんが取引を行いたい際に、Bさんを中継として取引を行うことでチャンネルを開設しなくても同様の取引を可能にするものです。
マイクロペイメント・チャンネルを開設している利用者が増えれば増えるほど、自分と取引をしたい相手が、誰かを中継してつながる可能性は上がります。まさに、利用者同士でひとつの大きなネットワークを構築するわけです。しかし、誰ともわからない人間が中継者になったら、お金を盗まれるのではないかという懸念もありますが、取引の安全を担保する部分は、ブロックチェーン上に記録をすることで防ぐことができます。
上記の例で言うと、有効期限が切れれば自動的に返金されるような仕組みです。まだ、実用には至っていませんが、Bitfury、Blockstream、LightningLabsなどの企業がライトニング・ネットワークの実装に向けて開発を行っています。この技術が実現することで、ビットコインを店頭での決済での利用もより現実的なものとなるかもしれません。
このように、ビットコイン自体がアップデートされ機能を拡張していくことで、より現実の世界に適した姿へと変化していきます。インターネットがこれだけ発展・進化してきた中で、次世代型の通貨と言えるのではないでしょうか。