新築アパートは節税目的に限り有効
ここからはいよいよ1億円の資産形成をするシナリオに入ります。
前述した住宅ローンを使用して、安全資産となる分譲住宅を購入するスキームは、できるだけ早く行って下さい。
ここで、居住する住宅の返済を100%カバーするのは、賃貸マンションの利回りが高い物件を購入するか、2物件以上ないと実現できないため、1物件では50%以上が目標になります。
もっと効率的に、かつ安全に利ざやを稼ぐには、入居率の高い中古アパートを1棟以上購入することです。中古アパートはなかなか買えないという先入観がありますが、金融機関の特性を知っていれば比較的簡単に1棟目は購入することができます。
中古アパートは見かけが悪く、入居者が入るかも心配だと思われる人は多いです。アパート建設会社のTVCMや広告では新築の絵にかいたような建物ばかりみかけます。しかし、現実では、新築アパートは節税目的に限り有効ですが、事業にはなりません。
また、最近取りざたされるように新築アパートは供給過剰で家賃が高いため入居率が低くなっています。
建物が高額で利回りが小さいため、家賃を下げられず、入居率は低下していきローン返済後赤字に転落し、さらに、売却時は、利回りを高くするために取得価格を大幅に下回る価格でEXITするしかなくなってしまいます。
私が近年購入している築20年超えのアパートは、売出時6%だった新築アパートを利回り12%以上で購入したもので、半値以下で取得し入居率は92%以上あります。
中古アパートは、市場実勢家賃で最も安い家賃設定のものを取得することができます。利回りが高く、入居率の高い中古アパートは今後も多少家賃を下げても収益を維持することができ、価格競争力があるため、売却価格も取得価格を下回ったことはありません。
新築も中古もアパートのリスクは入居率です。中古アパートは過去に遡り調査することができますが新築は実際に貸し出してからでないとわかりません。
新築でも10年目には「大規模修繕」が必要になる
また、中古では住宅設備や外壁のリフォームコストを心配されることがありますが、私の経験上、大きなお金がかかることはありませんでした。むしろ満室のボロアパートほどリフォームする意味が大きく、安く買った物件を、リノベーション後、さらに家賃を上げて価値を高めることができる絶好のチャンスでした。目安ですが、10世帯程度のアパートの外壁塗装費用は100万~200万円ほどです。
また、生活インフラではエアコン6万円、給湯器(プロパンは無料)、水回り(保険対象)、屋根(保険対象)、TVドアホン1万円、温水便座2万円、キッチン交換5万円程度ですんでしまいます。
ここで重要なことは、新築でも10年目で大規模修繕をするので中古と同額のリフォーム費用が必要になるということです。
次表は、実際にある表面利回り6%と12%のアパートにおける現存する木造の新築アパートと、私が保有した中古木造アパートの10年後のEXIT損益を計算しています。
驚くべきことに10年間運用すると新築では3989万円の大赤字であるのに対して、中古では3414万円の大黒字であることに気づくでしょう。これは耐用年数の長い鉄筋(RC)や鉄骨においても同じで、逆に減価償却率が低い分利回りが落ちます。
新築アパートは節税どころか、スッカラカンにされてしまうのです。
[図表1] 新検見川駅10分の新築と中古アパートの比較(2016.6.20)
[図表2] 長期金利(10年国債)利回り 財務省統計データより
もう1つの注意点は、低金利が今は続いていますが、1990年頃の貸出金利は6%を超えていた事実があります。
日本国債の発行残高は2015年に1000兆円を超え、いつか超円安にふれ金利が上昇することもあり、利回りが12%あれば安心ですが、6%では収益はマイナスになってしまいます。