「タワーマンションは初めてです」年金月30万円・67歳夫婦、30年住んだ思い出の戸建てマイホームを手放し、老後に住み替え。「ここを終の棲家にする」と決めたワケ【FPが解説】

「タワーマンションは初めてです」年金月30万円・67歳夫婦、30年住んだ思い出の戸建てマイホームを手放し、老後に住み替え。「ここを終の棲家にする」と決めたワケ【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「いまの持ち家に一生住みつづける」そう考える人は少なくないでしょう。しかし、年齢を重ねれば、家族構成や健康状態、移動手段も変わり、かつて暮らしやすかった家が負担になることもあります。本記事では、FPオフィスツクル代表の内田英子氏が、Aさん夫婦の事例から、現代の「老後の住まい」をめぐる考え方を紐解いていきます。※事例はプライバシー保護のため、一部脚色しています。

「一度買った家に住み続ける」だけが、老後の住まいではない

Aさん夫婦のように、当初購入した家が、年齢を重ねたあともそのまま暮らしやすい家であり続けるとは限りません。こうした考え方は、最新の国の住宅政策にも表れています。

 

2026年3月に閣議決定された新たな「住生活基本計画(全国計画)」では、「人生100年時代」を見据え、ライフスタイルに適した住宅への住み替えやリフォームによって、豊かで安心した住生活を実現していく考え方が示されています。高齢期についても、住宅の性能や規模、立地、経済面などを踏まえ、その人の暮らしに合った住まいへ円滑に住み替えられる環境を整えていくことが掲げられました。

 

つまり、一度購入した住宅を必ずしも「終の棲家」にすることだけを想定しているわけではないのです。家族構成や健康状態、暮らし方が変われば、それに合わせて住まいも見直していく。そんな青写真がうかがえます。

 

このような、住まいに対する考え方の背景には、人口減少や高齢化、空き家の増加といった住宅を取り巻く環境の変化があります。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の空き家は全国で900万2,000戸にのぼり、過去最多となりました。「住宅を所有したあとどうするか」までが社会的な課題になっており、住生活基本計画でも、適切に管理されない空き家が周辺の住環境に悪影響をおよぼすことが課題として挙げられています。

 

住宅の所有者には、住んでいる間のローン返済や維持管理だけでなく、必要に応じたリフォームや売却、除却、さらには相続まで見据えた「住まいの終活」を考えることも求められるようになっています。

老後の住まいは「どこに住むか」より「どう暮らしたいか」から

Aさん夫婦が30年前に戸建てを購入したことが間違いだったわけではありません。子育て中には十分な広さがあり、自由に暮らせる自分たちの家は大きな安心につながったでしょう。住宅ローンを完済すれば月の支出を抑えやすいことも、持ち家の大きなメリットです。地域とのつながりや、家族の思い出が積み重なった家への愛着も、お金だけでは測れません。

 

ただ、人生のフェーズが変われば、住まいに求めるものも変わります。住み替えがしたいと思うようになることも、ごく自然な人生の流れなのでしょう。

 

Aさん夫婦にとってタワーマンションの魅力は、利便性の高さだけにとどまらない大規模物件ならではの圧倒的な安心感とホスピタリティでした。

 

駅直結のデッキから1〜2階の医療モールやスーパーへ天候を気にせず移動できる利便性はもちろんのこと、24時間体制で警備員や管理スタッフが常駐する安心感は、体調面に不安を覚えはじめていた二人にとって大きな支えとなりました。また、冬場のヒートショックを防ぐ空調の効いた内廊下や、各階に設置されたゴミステーションなど、日常のちょっとした移動や家事の負担を減らす工夫が建物全体に行き届いています。

 

通院や買い物、自宅の修繕や維持管理など、若いころはカバーできていた負担も、年を重ねるにつれて背負いきれなくなってきます。「自分たちですべてを負担しなくても、建物全体の手厚い仕組みに守られて暮らせる」という環境を求めた結果が、タワーマンションへの住み替えだったのです。

 

「タワーマンションは初めてなので、少し心配もありました。ですが住み替え後、通院の負担が減ったのはもちろん、ちょっとしたお出かけも気軽にできるようになったんです。ここを本当の終の棲家にしたいですね」とAさん夫婦。少しぎくしゃくしていた二人の関係も、修復していったそうです。

 

もちろん、マンションにも管理費や修繕積立金の支払いはありますし、将来値上がりすることもあります。大規模修繕や管理組合の運営、災害や停電時のエレベーター停止など、戸建てとは異なる課題もあります。

 

なにが正解かは、家族構成や健康状態、住んでいる地域によっても変わりますし、年齢を重ねるなかで変化していくこともあります。だからこそ大切なのは、そのときどきの自分たちに合った暮らしを、自分たちで選び直せることなのでしょう。暮らしを維持するための負担を無理に抱え続けるのではなく、人やサービスに任せたり、住まいそのものを見直したりして、「自分たちで背負う範囲」を小さくしていくことも、老後の安心につながります。

 

まずは、これからどんな毎日を送りたいのか、そのためになにを担い、なにを手放すのかを夫婦で整理してみる。そのうえで、いまの資産や収入でどこまで実現できるのかを確認していく。住まいを考えるときも、家そのものからではなく、自分たちの暮らしと、それを支えるお金の両方から考えていくことが大切です。

 

 

内田 英子

FPオフィスツクル

代表

 

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