今回は、各士業の役割について見ていきます。※本連載は、長年にわたり法律事務所に勤務し、現在は士業専門のコンサルタントとして活躍する大坪孝行氏の著書、『いい弁護士の選び方 上手な付き合い方』(翔泳社)の中から一部を抜粋し、弁護士とはどのような人々なのか、依頼にはどの程度お金がかかるのかなど、基本的な知識を紹介します。

資格区分のわかりにくさから、グレーゾーンが多数存在

皆さんが耳にしたことのある法律に関する資格(士業)の名前は、一般的に弁護士・税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士等があると思います。

 

これらの資格がどのように区分けされ、誰に何の相談をすればいいのかについては、一般の方には非常にわかりにくい構造となっているのが現状です。

 

実際問題として、グレーゾーンと呼ばれる業務が多数あり、多くの方が誰に何を相談すべきかわからないという問題が発生していたり、士業同士で縄張り争いが発生していたり、士業が違法行為(犯罪行為)に手を染めて逮捕者が出ているのも事実です。

 

ここ最近の士業間の争いとしては、「就業規則を作成していいのは社会保険労務士だけなのか行政書士も作成できるのか」があげられます。社会保険労務士会と行政書士会でそれぞれが声明を発表し、就業規則の作成権限を争っている状況です。

 

弁護士と他士業の争いでは、弁護士と行政書士の争いがあげられます。マンガやドラマで流行していた行政書士が主人公の物語では、同物語の主人公である行政書士が離婚・相続・交通事故といった事件で、相手方と交渉を行うという越権行為を堂々と行っていました。

 

これは、一般の方が「行政書士が相手方と交渉できる資格であると誤認する恐れがある」として、弁護士会がドラマを放送したテレビ局に対して苦情を申し入れました。

 

弁護士と司法書士の間でも争いがあります。例えば、代理人として取り扱える簡易裁判所での権限(簡裁代理権)140万円以下の解釈について、依頼人1人に対して140万円以下なのか、相手方1人に対して140万円以下なのかという争いです。

 

このように、誰に何を頼めばいいのかは、非常にわかりにくい構造になっています。

事業主なら、企業法務および関連する相談は弁護士へ

そこで私見ですが、どの士業に何を相談・依頼すべきか、わかりやすいように簡単にまとめてみました。何かお困りの際は参考にしてみてください。

 

<資格別>

 

●弁護士・・・法律が絡む業務は全て(トラブルなどの民事事件・刑事事件・企業法務全般)

 

●税理士・・・確定申告・決算書の作成、税務に関する業務全般、資金関係

 

●司法書士・・・不動産登記、商業登記(会社の登記)に関する業務全般

 

●社会保険労務士・・・就業規則に関する業務、雇用に関する業務、助成金に関する業務

 

●行政書士・・・許認可業務(飲食・産業廃棄物・古物商等)、官公庁に提出する書類作成業務

 

<対象別>

 

●個人の方・・・弁護士 税理士 司法書士

 

●事業主の方・・・弁護士 税理士 司法書士 社会保険労務士 行政書士

 

このように、個人の方であれば、離婚・相続・交通事故・借金問題・近隣トラブルなどでお困りの際は弁護士に相談(一部は司法書士でも可)、確定申告や相続税対策等では税理士に相談となります。

 

事業主の方であれば、企業法務および関連する相談は弁護士、事業資金や決算関係・税務に関する相談は税理士、会社の登記や役員変更の相談は司法書士、就業規則や助成金の相談は社会保険労務士、許認可の相談は行政書士、といった形で区分けするとわかりやすいかと思います。

いい弁護士の選び方 上手な付き合い方

いい弁護士の選び方 上手な付き合い方

大坪 孝行

翔泳社

弁護士が必要になったら最初に読む本! 「専門家に頼まないとダメかも…」という問題が起こっても、どんな弁護士に頼んだらいいのか、ほとんどの人はわかりません。 ようやく弁護士にたどり着いても、費用がいくらかかるのか…

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