税理士事務所オーナーの子どもは、99%が後を継ぐ
なお、後に海外留学中の1995年に知り合った教授で、当時、青山学院大学経済学部で財政学を担当していたH教授から伺った話を付け加えます。
H教授がおっしゃるには、H教授の下に集まってくる社会人の大学院生さん達は、全員が税理士試験の税法科目の試験免除を目的とする人ばかりだ、とのことでした。当時、財政学を専攻して修士の学位を得ると、税理士試験の税法科目が3科目とも免除になったのです(この制度は改変され、2026年現在は、特定の条件を満たしつつ税法学の修士の学位を得ると、優遇措置を受けられるようです)。
そして、私が税理士事務所の跡継ぎのポジションにいながらにして、跡を継がずに海外に飛び出したことを全くご存じなかったH教授は、こう付け加えました。
「私が知る限り、税理士事務所の跡継ぎのポジションにいる方は、99%が跡を継ぎますね。開業医と似たようなものでしょう」
この言葉を聞いた時、私は、「自分は残りの1%なのだな」と思いました。当時は、税理士事務所の跡継ぎのポジションにいながら、跡を継がないのは、そのくらいレアなことだったようです。
そして、H教授のこの言葉を聞いた時、私は日本で終末期の病床に就いていた父のことに想いを馳せました。
現実主義者だった母は、私に後を継いでくれることを願っていましたが、父は私が大学の経済学部に入った頃から、「まさくん(私のことです)は、世界に羽ばたいて、天下国家を論じるような男になりなさい! 家業のこんな小さな税理士事務所を継ぐことなんか考えなくていいから」と、いつも言ってくれていました。
私は単に「好きなように生きた」だけであり、1%のレアな人材だったのは私の亡き父だったのです。そういう父をリスペクトしています。
母だけではなく、父までもが「後を継いでくれ」と言っていたら、私はきっと好きなようには生きられなかったと思います。好きなように生きるためには、それを阻害する環境にいてはいけないのだと、今では思っています。
また、好きなように生きさせてくれた両親に感謝しています。

