(※画像はイメージです/PIXTA)

親が介護施設へ入居したり、亡くなったりして実家が空き家になると、「実家をどうするか」という問題が浮上する。家は、誰も住んでいなくても維持管理費の負担が続き、「誰が支払うのか」といった現実的な課題が避けられない。しかし、いざ売却しようとしても、不動産の売却には「所有者本人の意思能力」が必須で、名義人が認知症などで判断能力が低下している場合、売却が難航するケースも。本記事では、ある家族の事例から、実家の終活を検討する際のポイントを、株式会社TBH不動産代表取締役・柏原健太郎氏が解説する。

実家問題は親の生前から始まっている

「実家をどうするか」という問題は、親が亡くなってから始まると考えている人も少なくないだろう。しかし、実際にはもっと前から始まっていることが多い。親が年を取り、体調を崩す、認知機能が低下する、入院する、介護が必要になる、施設へ入る……。家族の生活は少しずつ変化していく。

 

ところが不動産は、そんな家族の事情に合わせて動いてくれるわけではない。「そのときになったら考えればいい」と思っているうちに、取れる選択肢が少なくなることがある。

 

もしAさんの母が家族信託を知らなかったら。父やAさんが「まだ大丈夫」と先送りしていたら……。一つでもタイミングが違っていたら、結果は違ったかもしれない。

 

また、A家の場合、きょうだい仲が良かったことも、話を進めるうえでいい影響をもたらしたのではないかと推測する。親の財産の話は、家族関係が悪ければ簡単には進まないからだ。

同級生の実家を売って、自分の実家の“終わり”を考えた

筆者は20年以上不動産の仕事に携わり、さまざまな事情を抱えた不動産を扱ってきたが、今回は同じマンションで育った同級生の実家だっただけに、胸に迫るものがあった。

 

無事に売却が完了し、荷物の片づけも終わってAさんの実家が文字どおり「空き家」となったあと、筆者はAさんを自分の実家に招いた。「少し前までここに自分の実家があったことを思うと、感慨深いね」とえらく喜ぶAさんの姿に、筆者は思った。

 

ここにはまだ筆者の両親が住み、筆者自身も妻と子どもを連れて帰ってくる場所がある。けれど、この当たり前の光景もいつかは終わりを迎える。Aさんに起きたことは、数年後、十数年後の筆者自身なのかもしれない、と。

 

今回の件を振り返り、Aさんはいった。

 

「家族信託をやっておいて、本当によかった。母には感謝してもしきれない」

 

家族信託をしていなければ、成年後見制度の利用が必須だ。費用負担が増え、売却が遅れたり、売却自体ができかったりする可能性もあった。

 

実家について考えるのは、親が亡くなってからでは遅いことがある。家族で話せるうちに話し、できる限りの準備をする。そして、わからなくなったら誰かに相談する。それがのちの相続トラブルを防ぐ最善策だろう。

 

 

株式会社TBH不動産

柏原 健太郎

 

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