前立腺肥大の改善を目的に開発された薬に育毛効果が
では、もしAGAになってしまったら、どうすればいいのでしょうか。「遺伝子レベルのことだから、もうどうしようもない」と思いますか? そんなことはありません。薄毛の悩みに別れを告げるために効果的なAGAの治療法はちゃんと存在します。ここからはそれをお話ししていきましょう。
AGAの治療として、奨励されているのが内服薬・外用薬の服用です。
まず内服薬として勧められているのは「フィナステリド」内服です。
フィナステリドは、アメリカの製薬会社が開発した薬で、元は前立腺肥大を改善するためのものでした。ところが、この薬を飲んだ患者に、ひげや髪の毛が伸びる「多毛」の症状が現れたのです。
そもそも前立腺肥大の原因となるのは、実はAGAのメカニズムの項で紹介した「DHT」。AGAを引き起こす元凶となる、あのDHTです。これが前立腺の受容体と結合し、成長を促進して前立腺肥大やがんを招きます。
フィナステリドは、このDHTの生成を阻害する働きのある薬です。AGAのメカニズムとしてお話しした通り、AGAはⅡ型5αリダクターゼと男性ホルモンのテストステロンが結合することで生まれた、DHTによって起こります。
フィナステリドはこのⅡ型5αリダクターゼに作用することで、テストステロンをDHTに変換することを阻害。この2つが結合したとしてもDHTができないようにします。それにより、頭髪のヘアサイクルが短縮されることがなく、脱毛が起きないようになるのです。そのため、元は前立腺肥大のための薬でしたが、それがAGA治療にも効果を発揮することとなったわけです。
アジア人のAGAの約9割に効果があることが期待
アメリカでは、フィナステリドは1997年にAGAの治療薬として認可。以来、世界60カ国以上で承認されています。日本では2005年に厚生労働省によって承認され、「プロペシア」という名前の薬として商品化されました。
プロペシアは1日1回、1錠を最低半年間服用すると、効果が現れてきます。アジア人のAGAには約90%の割合で効果があるといわれています。ただし、ヘアサイクルの短縮を防ぐものなので、細い髪が太くなるのがプロペシアの効果であり、頭髪の本数が増えるわけではありません。
また、服用を続けている間は効きますが、飲むのを中止するとまた脱毛が始まることになります。
実は、酵素5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、プロペシアは、Ⅱ型5αリダクターゼを阻害する薬。Ⅰ型とⅡ型の両方を阻害する薬としては、新しく「ザガーロ」という薬が先頃、発売されました。両方の型の酵素を阻害するため、プロペシアよりもさらに強力な薬となっています。
フィナステリドの服用には、さまざまな注意点があるので、ここにまとめておきましょう。
・1日1回、1錠を決まった時間に飲む
・女性は飲むことができない
・効果の発現まで最低半年が必要
・勃起障害などが起こることがある
・前立腺がん検診時には、服用していることを医師に伝える
・割って飲まない
以上のようなことに注意すれば、「プロペシア」や「ザガーロ」はAGA治療にとても効果的な薬なのです。