地元の伝統文化と親和性の高い、音楽芸術分野での地方創生
ここで、淡路島が発祥の地である伝統文化について触れておく。国指定重要無形民俗文化財の伝統芸能「淡路人形浄瑠璃」である。創始の時期は、豊臣秀吉全盛期の安土桃山時代(およそ450年前)と伝えられる。江戸時代の中期には、淡路島で芝居をする集団である人形座が40以上あり、それらは西日本を中心に各地で興行していたとみられる。
淡路人形座によれば、明治になると、時代の変化の中で観客の関心が他の娯楽に移り、淡路人形芝居の修行の厳しさから若い後継者が育たず、徐々に衰退していった。そのため第二次世界大戦後、淡路人形芝居は消滅の危機にさらされていた。
ところが、1964年(昭和39年)に伝統を守ろうとする人々の尽力によって「淡路人形座」が生まれ、その後、淡路島の1市10町(現在は洲本市、南あわじ市、淡路市)が協力し淡路人形協会が発足した。淡路人形芝居は、喜怒哀楽を情緒豊かに表現する舞台芸術として高く評価され、郷土の古典芸能を守ろうという気運が高まった。
そして、1976年(昭和51年)5月4日、淡路人形浄瑠璃は国指定重要無形民俗文化財に指定されるに至る(淡路人形座ウェブサイト)。
そのうえ、2016年4月には、日本遺産として『古事記』の冒頭を飾る「国生みの島・淡路」ストーリーが認定され、その中で「淡路人形浄瑠璃」が構成文化財の1つとなっている。さらに、御食国(みけつくに)として、淡路島の海人が生産する塩や海の幸が都に運ばれ、天皇の食膳を司った(日本遺産ウェブサイト)。
実際に訪れてみると、瀬戸内海に浮かぶ淡路島は、朝廷に食材を献上してきた土地とあって、海産物、畜産物、農作物など食材に恵まれていることがわかる。
海岸沿いでは、目の前の浜で水揚げされた新鮮なしらすを、天日干しにしていた。山あいの道を上がっていくと、棚田の稲が青々と潮風になびいて、風光明媚な景色と共に豊かさを実感できる。
淡路島の人たちは、神話に現れる国生みのストーリーに連なる文化や芸能を職業とする専業集団によって、今に引き継がれている伝統芸能を誇りとしてきた。
これらの伝統的要素を考慮すると、地方の固有文化と親和性の高い音楽芸術を活用しながら、地方創生を目指す音楽島プロジェクトも、歴史的経緯を捉えたハイブリッドな事業展開であると言える。地域の伝統と共存しながら、新たな文化と地域住民の誇りを醸成できる可能性は高いと考えられる。
フィールド・リサーチを通じて感じたことは、プロジェクトに携わる音楽家たちは、訪れる観光客に対して、地域のブランド価値を踏まえた応対やふるまいを実践しており、地域に対する誇りと愛着を高めることに貢献していることである。
人々の感情や状況を敏感に捉える能力に優れた音楽芸術の担い手が、地方創生の中核となって大きな役割を果たすビジネスモデルとして、極めて有益な知見を得ることができた。今後、地方創生に様々な音楽人材が誘致される機運が熟することで、新しい文化を創り、新しい地域の魅力を創り、地域への評価と敬愛を高めていくことが期待できる。
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