【専門家の視点】「同居するか」ではなく「家計が続くか」で考える
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、65歳以上の世帯員がいる主世帯は2,375万世帯に上り、そのうち高齢単身世帯は761万7,000世帯、32.1%を占めています。高齢者のいる世帯のうち、3世帯に1世帯近くが一人暮らしという計算で、割合は過去最高となりました。高齢になったからといって、必ずしも家族と同居する時代ではなくなっているのです。
老後の住まい選びにおいて大切なのは、家賃が高いから同居するという消極的な理由ではなく、今の収入で無理なく暮らし続けられるかという視点です。
子どもから同居を提案されると、「断るのは申し訳ない」と感じる人も少なくありません。しかし、同居は家賃負担を軽減できる一方で、生活リズムや価値観の違いによるストレスが生じることもあります。
早苗さんは息子の申し出を断りましたが、それは家族を拒絶したわけではありません。「困ったら助けてもらう。でも、元気なうちは自分で暮らしたい」。その思いを実現するために選んだのが、公営住宅への住み替えでした。高齢で民間では住み替えが容易ではない場合にも、公営住宅は有力な選択肢になります。
ただし、公営住宅は、自治体ごとに収入基準などの入居条件が設けられています。応募者が多い地域では抽選となることもありますが、条件に当てはまるなら検討する価値はあります。また、公営住宅以外にも、サービス付き高齢者向け住宅や自治体の住まい相談窓口などがあります。家計や住まいに不安を感じたら、早めに自治体へ相談してみるとよいでしょう。
老後の住まい選びに正解はありません。同居も、公営住宅への住み替えも、それぞれにメリット・デメリットがあります。大切なのは、自分が安心して暮らし続けられる住まいを選ぶことです。収入や支出、健康状態、家族との距離感を踏まえ、自分らしい暮らし方を考えていきましょう。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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