「元気だから大丈夫」と思っていた父の、1年半ぶりの姿
東京で暮らす佐々木健太さん(仮名・52歳)は、日々の仕事や家庭の忙しさに追われる毎日を送っています。
健太さんの実家がある九州には、数年前に妻(健太さんの母)を亡くした父親の修一さん(仮名・当時78歳)が一人暮らしをしています。持ち家のため、年金月18万円で日常生活を送り、預貯金も約1,900万円ありました。
離れて暮らしていることもあり、健太さんが修一さんと連絡を取る機会は年に数回ほど。最後に実家へ帰省したのは半年前のことです。たまに電話で近況を尋ねても、修一さんはいつも「介護も看護も必要ないから、まだ一人で大丈夫だ」「元気だから心配するな」と明るく答えていたといいます。
その言葉を疑うことなく、健太さんは「父はまだ一人で元気に過ごせている」とすっかり安心しきっていました。
そんなある日、健太さんは半年ぶりに修一さんに電話をかけました。しかし、何度呼び出しても一向につながらず、メールをしてもいつまでも返信がありません。いつもならば、修一さんは必ず折り返しの連絡をくれるはず――。心配になった健太さんは、急きょ仕事を休んで実家へ向かいました。
実家に到着すると、新聞やチラシで溢れかえった郵便受けが目に入ります。玄関のドアを開けると、生ごみが腐ったような異臭が漂っていました。勢いよく家の中に入ると、白骨化が進み、もはや個人を認識することすら困難な状態に変わり果てた修一さんの姿がありました。
気が動転しながらも、健太さんはすぐに119番通報を実施。駆けつけた救急隊員によって死亡が確認されたあとは、すぐに警察へと引き継がれました。その後は事件性の有無を調べる検視や、身元確認(歯科所見やDNA鑑定など)の手続きが進められ、健太さんは警察署で長い時間を過ごすことになりました。
65歳以上の人がいる世帯の3割超が「単独世帯」
高齢者の一人暮らしは、決して珍しくありません。厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」によると、65歳以上の人がいる世帯のうち、単独世帯は32.7%に達しています。
一人暮らしで元気な高齢者ほど、「介護サービスは必要ない」と考えがちです。しかし、転倒や急病などは、昨日まで元気だった人にも起こります。大切なのは、介護が必要になってからではなく、元気な段階から「異変に気づける仕組み」を作っておくことです。
