「助けを求める声」でも慎重に
警察に行こうと誠さんは言いましたが、清志さんは「恥ずかしくて絶対に行けない」と首を振りました。
「『なぜ見知らぬ人にお金を渡したのか』『若い女性に下心あったのでは』と言われる可能性があるし、どうせお金は戻ってこないからと。死んだ母さんを裏切るようなことをして、一緒に貯めたお金をムダにしたことが耐えられないと、自分を責めているんです」
亡き妻の写真の前で「母さん、すまない…」と手を合わせる清志さんに、誠さんは「でも、勉強代として諦められる金額だったのは不幸中の幸い。ロマンス詐欺の事件はよく聞きますが、こんなことが身近に転がっているんだとゾッとしました」と語ります。
警察庁の「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」によると、令和7年のSNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は1万5,142件、被害総額は1,827.0億円にのぼります。
ただし、今回の清志さんのケースは、そうしたデータには載らない「ロマンス未満の個人的なトラブル」といえるでしょう。被害額が比較的少なく、被害者自身が恥ずかしさから被害届を出さないため、表に出ないまま埋もれていく被害が存在します。
困っている人の話を一切聞かずに無視したり、突っぱねたりするのが正しいとされる社会も、どこか冷たく寂しいものです。とはいえ、見知らぬ人に安易にお金を渡してしまう慎重さの欠如は否めません。
実際、妻を失ってひとりになった清志さんに、孤独という「隙」はあったのでしょう。そうした事態は他人事ではないからこそ、いかなる場合も個人でお金を渡して解決するべきではありません。悪意から自分の身を守るためには、慎重な行動が求められます。
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