「夫から逃げているんです」…警察に頼れない理由
きっかけは数ヵ月前。駅前のベンチで座っているときに、30代後半に見える女性から話しかけられたことでした。
「すみません、スマホの充電が切れてしまって。この近くに安いホテルはありませんか? 実は、夫のDVから逃げてきたんです……」
見知らぬ女性からの突然の相談。当然、警察に行くよう伝えましたが、女性は「警察だと夫に連絡がいってしまう」と必死でした。
「すごく困っている様子で、夫からされたことを話すんだ。聞いているうちに同情してしまって。とりあえず、その日と翌日ぐらいはどこかに泊まれるだろうと、1万円を渡してしまった」
「本当に助かりました。必ず返します」とお礼を言う女性と、連絡先を交換。しかし、それから「今日も安いネカフェを探しています」などと、数日おきに連絡が入るようになりました。
「私も時間があるから、つい会いに行って話を聞いてしまって。それで宿泊代や食費として、お金を渡すようになってしまったんだ。どうしても嘘だとは思えなくて、人助けのつもりだった」
そして、しばらくすると、女性からこんなお願いをしてきたのです。
「アパートの初期費用として30万円あれば一人立ちして働ける。毎月分割になるけれど、これまで借りたお金と合わせて必ず返します。清志さんしか頼れなくて、すみません」
清志さんは迷いました。それでも、「これで彼女が救われるなら。見捨てるのは、人としてあまりに薄情だ」と自分に言い聞かせ、30万円を手渡ししてしまったのです。
ところが、お金を渡した翌日からLINEは既読にならなくなりました。電話も通じず、彼女と立ち寄った喫茶店などを探しても、その姿を見ることはありません。
渡した総額は40万円ほど。年金は月16万円、通帳の残高も1,700万円ほどあり、生活に大きな影響がある金額ではありません。しかし、清志さんが受けた精神的ダメージは甚大でした。
