病院の待合室で顔なじみと談笑する高齢者たち。その通院は「治療のためだけ」ではないケースも少なくありません。独居高齢者が増えるなか、医療機関の待合室は、地域の居場所としての役割も担うようになっています。見ていきましょう。

「1割だから安い」とも言えない…財布を痛めて通うワケ

久仁子さんは「変形性膝関節症」と診断されており、加齢による膝の痛みや軟骨のすり減り自体は確かな事実です。

 

医師からは、症状が落ち着いているため頻繁な通院が必ずしも必要とは言われていませんでした。しかし久仁子さんは、電気治療の予約をいれて、週に1~2回足を運んでいるといいます。

 

75歳以上の多くは後期高齢者医療制度の対象となり、窓口負担は原則1割(一定以上の所得者は2割または3割)です。しかし、月14万円ほどの年金(遺族年金含む)で食費や光熱費を賄いながら暮らす久仁子さんにとって、いくら1割負担とはいえ、再診料やリハビリ費用、薬代などが重なれば毎月の医療費は決して軽視できる額ではありません。

 

ではなぜ、財布を痛めてまで足繁く通うのでしょうか。その背景には、お金の計算だけでは測れない高齢者の孤立問題が存在します。

 

厚生労働省の「国民生活基礎調査(令和7年)」によると、65歳以上の高齢者のうち「通院者」の割合は全体の約7割にのぼり、75歳以上になるとその割合はさらに高まっています。高齢者にとって病院通いが日常の一部となっていることが伺えます。

 

また、内閣府の「高齢者の生活環境に関する調査(令和5年)」によると、一人暮らしの高齢者のうち「会話の頻度が2~3日に1回以下」と答えた人が約3割にのぼります。日々の生活の中で誰とも言葉を交わさない日が珍しくないのが、現代の独居高齢者が置かれている現実です。

「不必要な受診」か「必要な居場所」か

久仁子さんにとって、病院へ行く理由は膝の痛みだけではありません。そこには顔なじみがいて、自分の不在を気に掛けてくれる人がいます。医療機関が、本来の役割とは別に地域の見守りの役割まで担っている現状。しかし、必ずしも緊急性の高くない受診は、医療現場の負荷につながるという指摘もあります。

 

本来の医療提供の場としての効率性や制度の持続可能性が問われる一方で、高齢者の孤立を受け止める場が不足しているという構造的な課題も浮かび上がっています。

 

「また来週ね」

 

そう言って、“仲間たち”と別れる久仁子さん。こうした姿は、高齢化と孤立が同時に進行する現代社会が直面している現実といえます。

 

 

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