定年後の恋愛「五類型」
私が書籍のために対談したジャーナリストの田原総一朗氏のケースは、前著でも触れた。
田原氏は、これまでに2人の奥様を亡くされた。そして、対談当時のお相手は、高校の同級生だった。1934年に生まれた田原さんは90歳を超えており、お相手も同様。そして2人は一緒に風呂に入ったりはするが、いわゆるプラトニックな関係であり、そうして互いに人生を豊かにしている。
定年後の人たちの恋愛には、非常にバラエティに富んだパターンが存在する。仕事や子育ての義務から解放され、人生の残り時間を「自分らしく豊かに過ごす」という意識が強いため、若い世代とは違った、成熟した、あるいは自由な恋愛の形が見られる。
具体的には以下のようなパターンが挙げられる。
①熟年再婚・パートナーシップ:孤独を避けるため、あるいは共通の趣味を分かち合う相手を求めて、新たなパートナーと再婚や事実婚の形を取るケース。お互いの生活ペースを尊重し、別居婚を選ぶ人もいる。
②「老いらくの恋」・青春の再来:60代、70代になってから、かつての初恋相手や新しい相手と、まるで若いころのように情熱的な恋愛をするパターン。明治から昭和にかけて活躍した歌人であり実業家(住友総本社の常務理事)の川田順氏が詠よんだように、「墓場に近き老いらくの、恋は怖るる何ものもなし」といった、失うもののない強さがある恋とも言える。
③趣味やコミュニティでの出会い:登山、旅行、地域のボランティア、料理教室など、趣味を通じて出会い、共通の話題で盛り上がる恋愛。経済的、精神的な余裕があるため、自立した大人同士の安定した関係を築きやすいのが特徴。
④「いい距離感」の恋人関係:結婚という形式にこだわらず、お互いのために適度な距離感を保ち、孤独を感じたときや、楽しい時間を共有したいときだけに会う、ライトな関係を好むケースも増えている。
⑤「第2の人生」としての新しい出会い:マッチングサービスや結婚相談所などを通じ、まったく新しい人間関係から恋愛に発展するパターン。定年後に「もう1人の自分」を探す過程で、価値観の合うパートナーを見つける人も少なくない。一方で、定年後の恋愛は「人生の最後をどう楽しむか」という前向きな側面がある一方で、家族との関係性や経済的な問題など、若いころとは違った特有のハードルがあるのも特徴である。
佐藤 優
