実は、日本全体の資産は増えている
では、なぜこんなことが起きるのでしょうか。「お金の問題」だと思っているその不安の正体は、実は“お金そのもの”ではないからです。
「どういうこと?」と思われるでしょう。このまま、続けて読み進めてください。私たちはこれまで、「いくら持っているか」「どれだけ増やせるか」を教わってきました。現に、金融庁の調査(2025年6月末時点)によれば、NISA口座の開設数は制度開始当初(2014年1月)と比べて約5.5倍にまで増えています(図表1)。
それくらい国民の投資・資産運用への興味関心が高まっていることがおわかりいただけるでしょう。しかも日本は、コロナ以降、投資・資産運用する人が増え、家計の金融資産全体を見ても右肩上がりです(図表2)。
でもお金の不安は消えないですよね? それは一体なぜでしょうか。お金を増やすことより、“お金とどう向き合い、どう使い、どう感じるか”つまり、お金との「関係性」が大きく影響するからです。どれだけ資産が増えても、この関係性が整っていなければ、不安は消えません。
逆に言えば、お金との関係性が変われば、資産が同じでも、感じる安心や幸福は大きく変わるのです。
「老後に不安」83.2%…お金が不安なまま使われている
こうした動きとは裏腹に、私たち国民のお金への不安・心配は拭えず、高い水準でとどまっているのが日本の現状です。各種調査(生命保険文化センター、OECD、内閣府など)は、お金の不安を抱える人が依然として多いことを示しています。
例えば、生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2025年度)によると、自分の老後の生活に不安感があると答えた人の割合は83.2%に達しています(図表3)。
また、内閣府の国民生活に関する世論調査(令和7年8月)によると、日頃の生活の中で、悩みや不安を「感じている」「どちらかといえば感じている」と答えた者(2295人)に、悩みや不安を感じているのはどのようなことか聞いたところ、「老後の生活設計について」を挙げた者の割合が63.9%、「自分の健康について」を挙げた者の割合が62.7%、「今後の収入や資産の見通しについて」を挙げた者の割合が60.5%と高く、以下、「家族の健康について」(51.2%)、「現在の収入や資産について」(47.9%)などの順となっていました。
いずれにしても、お金の不安を抱えている人が多いということがうかがえます。
さまざまな制度が整い、知識が広がり、投資が身近になった今でさえ、8割を超える人がお金の不安を抱えて生きている。これが、日本のリアルな姿。その原因は、あなた自身にあるのではなく、私たちを取り巻く社会の構造そのものが、不安を生みやすい仕組みになっていることにあるのです。
その構造の正体を「不安通貨」という言葉で解き明かしていきます。不安通貨とは、不安という感情をまとったまま使われているお金のことです。お金のことを学べば学ぶほど、調べれば調べるほど、不安が増えていく。この不思議な現象の正体が、不安通貨の増殖です。
この不安通貨の存在があるからこそ、日本人の多くが、お金と接しているときに不安が付きまとうことが多いのです。



