家賃の滞納、連帯保証人への請求検討時に発覚した「契約書の問題」
それから数年が経過した令和7年。
物価高や家電量販店との競争激化などの影響もあり、健介さんの経営が徐々に苦しくなっていきました。
やがて支払いが遅れ始め、気がつけば3ヵ月分の家賃を滞納する状態となってしまいました。
そこで、一郎さんは弁護士へ相談することにしました。
「健介さんとの付き合いは長く、不憫に思うこともあります。ただ、私としては家賃の回収も考えなければなりません。正樹さんが連帯保証人になっていますので、正樹さんに請求することになるのでしょうか?」
そう言って一郎さんが差し出した契約書を確認した弁護士は、一つの問題に気付きました。
「一郎さん、この契約書ですが…保証人へ請求できない可能性があります。」
「えっ?」
弁護士が問題視した「極度額」の定めの欠落
弁護士が問題視したのは、契約書に「極度額」の定めがなかったということです。
賃貸借契約から生じる毎月の家賃や共益費、原状回復費用など、将来発生するかもしれない範囲が不確定の債務を保証する契約を「根保証契約」といいます。
令和2年4月の民法改正で、個人がその根保証契約を連帯保証する場合には、「極度額」つまり上限額を決めておかなければならなくなりました。
改正前であれば、このような極度額の定めがなくても、連帯保証契約が直ちに問題となることはありませんでした。
一郎さんが参考にした昔の契約書にも、極度額の記載はありませんでした。
そのため、正樹さんとの連帯保証契約は、無効になる可能性が生じていたのです。
民法改正前にすでに結ばれていた保証契約が続いていただけであれば、極度額の定めがなくとも問題はありませんでしたが、このケースでは、改正後に新しい保証契約を結んだことになります。
このように、法改正後も契約書のひな形をそのまま使い続けてしまったことが、思わぬ法的リスクにつながったのです。
