専門家の視点|「辞められること」と「辞めること」は別の選択
増田さんが決めたのは、辞めることではなく働き方を変えることです。失った役職にしがみつかず、無理な残業はせず、休日まで仕事を持ち帰ることもありません。「評価されたい」というフェーズを終え、あと4年は淡々と割り切って仕事をすることに決めました。
職場環境が心身に悪影響を及ぼしている場合は、無理をする必要はありません。 しかし、「会社なんていつでも辞められる」と思える状態になると、不思議と会社への不満は減ることがあります。仕事量が適度で、人間関係にも大きな問題がないのであれば、「辞められるけれど、あえて辞めない」という選択肢は十分合理的です。
「会社を辞められるだけの資産があるなら、すぐに退職したほうがよい」と考える人もいるかもしれません。しかし、給与や退職金はもちろん、厚生年金に加入し続けることで将来受け取る年金額が増える可能性があるほか、健康保険による保障、有給休暇、福利厚生なども利用できます。また、毎日の生活リズムや社会とのつながりを維持できることは、お金では測れない価値といえるでしょう。
資産形成を終えると「社会とのつながりを持つために働く」という考え方に変化する人もいます。総務省「労働力調査(2015年)」では、60~64歳の就業率は約75%まで上昇しており、多くの人が定年後も働き続けています。収入だけでなく、生きがいや社会とのつながりを求めて働き続ける人も少なくありません。
いずれにしても、目指したいのは「生活のために辞められない」のではなく、「自分の意思で続ける、あるいは辞める」という選択肢を持つことです。経済的な安心と心のゆとりの両方を意識しながら、これからの働き方を考えてみてはいかがでしょうか。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
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