今回は、中国のGDPが実態以上に押し上げられた理由を見ていきます。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、中国経済の危うさと、日本経済に与える影響、世界経済への波及などを検証していきます(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

過剰投資が大きな要因のひとつ

中国GDPと輸出入総額、小売売上高、固定資産投資それぞれの年平均成長率推移を、2010~2012年、2013~2015年で比較した数値が以下の表となる。

 

 

輸出入総額の成長率は大きく落ち込んでおり、中国経済の勢いの急低下がみてとれる。また、小売売上高も2ケタ成長を保っているとはいえ明確に低下していて、中国のGDPの大きなウェイトを占める固定資産投資もほぼ半分の成長率にとどまっている。

 

続いて個人消費についてみてみよう。2013年の数値をベースにすると、各国のGDPに占める個人消費の割合は、米国が約70%、日本が約60%、中国が37~38%となっている。

 

直近の中国における消費の伸びを勘案すると、現在は40%程度の割合を個人消費が占めていると考えられる。中国で個人消費のウェイトが低いのは、公共投資など総資本形成の割合が非常に高いためである。

 

仮に、中国の個人消費のGDP構成ウェイトが日本並みであった場合(他のGDP構成要素の割合が日本並みに低く抑えられた場合)、2015年の中国GDPは実際の59兆2100億元に対して、40兆元を僅かに下回る水準(約39兆5000億元)となる。

 

これは実際の中国の2010年の水準も下回るものであり、2015年の日本のGDPの1.16倍程度の水準にとどまることになる。仮に、個人消費のウェイトを米国並みにした場合、2015年の中国GDPは526兆円となり、2015年の日本と同水準になる。

 

この試算は、直接的なGDP偽装とはいえないものの、過剰投資の結果、実態以上にGDPを押し上げる状況となっているということを示すものであり、本質的なGDP水準を試算したものとなる。

中国の真のGDPは政府公表値の半分から3分の2程度?

各国メディアも、こぞって中国政府が発表するGDP値への疑問を表明している。フォーチュン誌は

 

「ロンドンに本拠を置くリサーチハウス『キャピタルエコノミクス』によると、中国の2016年第4四半期のGDP成長率は4.5%程度」と報道。また、フォーブス誌が「スウェーデンのトップエコノミストは中国のGDP成長率を3%であると指摘」

 

と報道するなど、「中国の統計は幻想。実際の成長率は3%」と断じる米英メディアは少なくない。

 

先にあげたいくつかの検証や、これら各国メディア、専門家の指摘を総合して考えると、中国の足元のGDP成長率は3~4%で、公表値の半分から3分の2程度であるとするのが妥当だと本誌は見ている。つまり、2015年の中国のGDPは、発表された59兆2100億元(1064兆円)に対して、実際は36兆4500億元(655兆円)程度だと推測できる。

 

FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう

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