今回は、中国が「日米露関係の進展」を本気で嫌がる理由を分析します。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、中国経済の危うさと、日本経済に与える影響、世界経済への波及などを検証していきます(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

反中路線を突き進むトランプ

経済の苦境は中国のパニック的な状況を誘うことにもつながろう。すなわち、地政学リスクの台頭である。

 

2016年12月15日、中国海軍が南シナ海のフィリピン沖公海上で、米海軍の無人潜水機を奪取したと伝わっている。トランプ米次期大統領が、12月2日に台湾総統との電話会談を行ったほか、11日には中国が絶対に譲れない「一つの中国」政策に対して疑問を呈したことなどに対する挑発行動と捉えられている。

 

ちなみに、トランプ氏は前日の14日には、南シナ海で中国と対立するベトナムのフック首相とも電話会談を行っている。

 

1979年に米中両国が国交樹立して以来、アメリカでは中国の主張する「一つの中国」政策を受け入れてきた。米大統領も次期米大統領も、台湾総統とは接触しないという慣例を厳守してきたが、トランプ氏はこれを一方的に破ったことになる。まさしく、中国に対して喧嘩を売った形になっている。

日米露関係の進展によって「中国包囲網」が本格化

トランプ米次期大統領の「反中親露」姿勢、安倍首相とプーチン大統領の日露首脳会談実施など、日米露関係の進展による「中国包囲網」に対して中国は警戒感を強めている。トランプ氏のベトナムのフック首相やフィリピンのドゥテルテ大統領との電話会談なども、より危機感を強めさせる要因だろう。

 

また、ハリス米太平洋軍司令官は講演で「米国は南シナ海で中国との対決も辞さない」と明言している。経済、軍事ともに「孤立化」を恐れる中国が「強い中国」を演出するため、遠くない将来に無謀な暴挙に出ないとも限らない。

 

ただ、その際は米国も「本気」だろう。トランプ次期政権の陣容として、国防長官には元中央軍司令官のジェームズ・マティス氏、大統領補佐官に元陸軍中将のマイケル・フリン氏、CIA長官には元陸軍士官のマイク・ポンペオ氏が指名されるなど元軍人の起用が目立っている。

 

なかでも、マティス氏は湾岸戦争やイラク戦争で陣頭指揮にあたった人物であり、過激で好戦的な発言も多い。また、マティス氏とフリン氏は「対中強硬派」、「反オバマ派」とも位置づけられ、オバマ時代の対中政策からの決別を示す役割も担っている。

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